Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

時を追う者/著:佐々木譲

これは、自分の過去を書き換えるのではなく、歴史そのものを変えることができるかどうかを考えさせる小説だった。

始めの50ページほどは、「100年戻し」という言い伝えがあり、それを実行できる近くの亀裂があるということを繰り返し繰り返し、主人公を説得するために(読者に考えさせるために)書かれている。

第二次世界大戦が終わった4年後の東京。やっと焼け野原から復興の兆しが見えだしたところだった。主人公は、破壊工作や諜報活動を行うスパイを養成していたと言われる陸軍中野学校出身の藤堂直樹。

藤堂は、復員してから勤めた会社で賃上げ交渉の為の労働組合の活動で留置場に入れられていた。そこに歴史学者守屋淳一が訪れ、GHQの力を使って釈放させてくれた。そのまま東京大学に連れていかれ、「過去に戻って開戦を阻止できたらどうする?」と守屋淳一と物理学者の和久田元から訊かれた。

「過去に時間を遡る手段を発見した」と聞かされ、「過去に戻って、戦争を始めた者たちを排除し、満州事変を阻止して欲しい」と依頼をされた。

半信半疑だった藤堂は、組合活動で首になっていた永原与志と出会い、やくざ者に絡まれていた水村千秋を助けた。その3人が、若い女性に乱暴をするために拉致しようとしていた進駐軍と争ったときに、誤って進駐軍の兵士を殺してしまう。そのため、GHQと日本の警察から追われることになり、逃れるために3人は過去に戻れる穴に入ることになった。穴から出ると、そこは昭和6年9月5日の日本だった。

日本での実行は難しいと判断した3人は、満州事変の5人の首謀者排除のために中国大陸へ渡った。

与志を失い、千秋は行方不明になったが、首謀者4人の排除に成功した直樹は日本に帰りつき、100年戻しの穴に入り、戦後の日本に戻った。しかし、そこは戦争の無かった平和な国ではなく、元号が無くなった西暦1949年で、「広島、長崎、名古屋、新潟、小倉、横浜、東京」にピカ(原爆)が落とされていた。また、戦後、同盟軍と反乱軍による内戦(新しい戦争)まで起こっていた。

再び歴史を変えるために、残っていた首謀者の一人を排除するために、再び直樹は穴に入り、中国へ渡った。

排除に成功した直樹は穴をくぐって、日本に戻ってきたが、やっぱり戦争は防げてはいなかった。

 

もし、タイムマシンがあったら歴史はどうなるのか、・・・・・・考えたこともない過去と未来の話だった。