Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

慟哭は聴こえない/著:丸山正樹

デフ・ヴォイス 私のいないテーブルで 龍の耳を君に 刑事何森 孤高の相貌 刑事何森 逃走の行先 これらは全て、丸山氏の著書だ。 デフ・ヴォイスから、丸山氏の著作に興味を持ち読み漁った。 いずれも聴こえない人(聾者)について書かれたものだが、聴こえな…

不屈の達磨 社長椅子は誰のもの/著:安生正

再生可能エネルギーの送電施設を開発・運営し、5300人の従業員を擁する一部上場(プライム市場?)のジャパンテックパワー(JTP)の内紛を描いた話だった。 経済紙というよりもゴシップ紙に近い出版社が、社長のゴシップ記事を掲載した。その直後、株…

絡新婦の糸 警視庁サイバー犯罪対策課/著:中山七里

女郎蜘蛛とは、水辺に現れる雲の妖怪で、人の足に糸を絡めて水中に引き込むと言われている。題名にある「絡新婦」は、熟字訓。 アカウント名<市民調査室>と名乗り、SNS上でフェイク情報を流すものが現れた。 廃業寸前のお年寄りの夫婦が二人で切り盛り…

エンド・オブ・ライフ/著:佐々涼子

作者の「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」と「デフ・ヴォイス」を読んで、この本も読んでみようと手にとった。 「エンド・オブ・ライフ」とは、「人生の終末」。 健康な人から見た人生最期の時をどう迎えるかと、病に侵された人が人生の最期の時をどう迎…

ボーダー 移民と難民/著:佐々涼子

読めば読むほど、日本という国に対して悲しくなっていく。 裏金疑惑で問題になっている自民党の主要メンバーが全員不起訴になろうとしている。大口の脱税をしても罪にならない人たちがいる。反面、子ども食堂が増えてきているが、子どもの6人に一人は貧困家…

ファントムの病棟 天久鷹央の推理カルテ[完全版]/著:知念実希人

これは、3年前に読んだ「天久鷹央の推理カルテⅡ」の加筆修正版だった。プロローグを読んで、以前読んだことがあることに気づいた。よく確かめもせずに手にしてしまって少し後悔したが、思い出しながら読めてよかった。 主人公の天久鷹央は、先天的に『他人…

いまこそガーシュウイン/著:中山七里

岬洋介シリーズ8作目。 「ガーシュウイン」ってなんだろうというところから入った。 20世紀前半に活躍したアメリカの作曲家ジョージ・ガーシュインのことだった。 最初に紹介される「前奏曲第2番嬰ハ短調」をyoutubeで聴いてみた。本文にもあったが、私に…

大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変/著:尾上哲治

過去に、ビッグファイブという①オルドビス紀末の絶滅、4億4500万年前、85%の種が絶滅 ②後期デボン紀の絶滅、3億7400万年前、82%の種が絶滅 ③ペルム紀末の絶滅、2億5200万年前、96%の種が絶滅 ④三畳紀末の絶滅、2億150万年前、8…

諸葛亮(下)/宮城谷昌光

この小説は、中国の魏・蜀・呉の時代の三国志に登場する諸葛孔明にスポットライトをあてて書かれている。 下巻は面白くなかったので、読み終わるまでに時間がかかった。 次から次へと様々な人物が登場するが、それぞれの人物の人間味がほとんど描かれていな…

あなたが誰かを殺した/著:東野圭吾

久しぶりに東野圭吾を読んでみた。 警視庁刑事部捜査第一課の加賀恭一郎シリーズの第11作目。 父親の最期を看取った病院の看護師金森登紀子の紹介で、鷲尾春那に長期休暇中だった恭一郎を引き合わせた。 春那はセレブが集う夏の別荘地で連続殺人事件の被害…

諸葛亮 上/著:宮城谷昌光

諸葛亮、すなわち諸葛孔明の話だ。 この本で一番驚かされたのは、孔明を軍略の天才のように扱っている映画や小説が多くあるが、軍略ではなく、行政の天才ということが分かった。 三国志に登場する曹操と孫権の「赤壁の戦い」は、映画の「レッド・クリフ」で…

ふるさと銀河線 軌道春秋/著:高田郁

「生きにくい時代です。辛いこと悲しいことが多く、幸福は遠すぎて、明日に希望を見出すことも難しいかも知れない。それでも、遠い遠い先にある幸福を信じていたい。あなたの明日に、優しい風が吹きますように。」と作者が登場人物たちに託した言葉と「あと…

脈動 /著:今野敏

警視庁生活安全部少年事件課巡査部長・富野輝彦、お祓い師の鬼道衆の鬼龍光一と奥州勢の安倍孝景、高校生で元妙道の池垣亜紀たちが活躍するシリーズ。 富野は、日本神話のアマテラスの直系の神武天皇に逆らったナガスネ彦(長髄彦)の末裔という設定でオカル…

エンジェルフライト 国際霊柩送還士/著者:佐々涼子

第10回開高健ノンフィクション賞受、賞作。 DVDで、米倉涼子が主演する「エンジェルフライト」を見て凄い話だと思い、もしかしてこれは原作があるのではと探し、この本を探して見つけることができた。 ENGEL FREIGHTは、「天使が運ぶように…

発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年/著:松永正訓

主治医の松永医師が、自閉症の息子・勇太くんを育てた母・立石美津子さんからの取材をノンフィクション小説として仕上げている。 勇太くんは出産前検診でダウン症の疑い有りと診断され、お母さんは悩んだ。生まれてみればダウン症ではなかったのでホッとされ…

百鬼園事件帖/著:三上延

700万部のベストセラー「ビブリア古書堂の事件手帖」の三上延の最新作。 何か変な話だなと思いながら読み進めていくと「怪談話」だった。 表題の「百鬼園事件帖」の「百鬼園」は、実在の小説家・内田百閒(本名:榮造)の「百鬼園随筆」から引用している…

ふたつの時間 ふたりの自分/著:柚月裕子

表紙の装画はGLAYのTERU。 柚月裕子が作家デビューしてから、日常生活から、創作の裏話までの15年間を綴ったエッセイ集。幼いころから父親の転勤で引っ越しを繰り返し友達がなかなか作れず、本が友達だった柚月氏の軌跡が辿れる。 <目次> 〇ふた…

動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるディープな話/著:大渕希郷

動物たちの意外な姿や、展示のこだわり、取り組んでいる課題など、動物園関係者が語るマニアックな話。 動物園に行く前に読んでおくとより楽しく過ごせる気がする。 <目次> 第1章 アメリカ大陸にすむなかま 1 有毛目アリクイ科 オオアリクイ 2 被甲目ア…

認知心理検察官の捜査ファイル② 名前のない被疑者/著:貴戸湊太

前作同様、家具や衣服を堅持事務室に持ち込んで住みついている大神祐介。大神は、心理学で被疑者の嘘を見破り口を割らせてきたエリート検事だ。その大神のもとで様々な事件を経験し成長していく検察事務官の朝比奈こころ。この二人のところに殺人事件の被疑…

奈良監獄から脱獄せよ/著:和泉桂

大正時代に無実の罪で監獄に収監された男たちの脱獄に至るまでの物語だった。 数学教師の弓削朋久が赴任した橘樹高等女学校は、良妻賢母を育てることを目標にし、校則も厳しく、友達同士で活動写真やカフェにも立ち寄ることが禁じられていた。そのためか、結…

君といた日の続き/著:辻堂ゆめ

すごく感動した小説だった。 小学生で亡くなった娘への思い。別れた妻への思い。もっと娘にしてあげることがあったのではないかという自分を責める気持ち。別れた妻の気持ちに気づけなかった自分。 「夫婦の愛、両親の娘への愛、様々な思いや温もり、悲しみ…

墨のゆらめき/著:三浦しをん

三浦しをんの本を久々に読んだ。三浦氏は女性の筈だが、読んでいると男性が書いたのではないかという気がしてきた。しかし、読み進めていく内に心のうちの表現は、やはり三浦氏のものだと感じた。ネットリもサラッともしすぎ、ほのぼのと表現されていると感…

子どもの嫌いな私のアパートに座敷童が住んでました/著:鈴森丹子

ファンタジー的な軽い内容かと思っていたら、まじめな物語だった。 ハウスメーカーに勤める東湖澪は子どもが苦手だった。澪は独身者ばかりのアパートで兎のビッケと悠々自適に暮らしていた筈だった。ところが両隣と真上の部屋の住人達が再婚などで急に赤ん坊…

隠居おてだま/著:西條奈加

老舗糸問屋の嶋屋元当主・徳兵衛は、還暦を機に身代を息子・吉郎兵衛に譲り、巣鴨村で隠居暮らしを始めた。ゆっくりと余生を送れると考えた徳兵衛のところに、孫の千代太が次から次と厄介ごとを持ち込んできた。 最初は犬、次いで仔猫、とうとう子供まで拾っ…

再雇用警察官⑥ 七色の行方不明/著:姉小路祐

シリーズの6冊目。 定年退職後の再雇用警察官安治川信繁と少年係から左遷された新月良美と、警務部から部下の公金横領の責任を取らされ降格となり消息対応室に室長として異動になった芝隆之の3人が、四天王寺署の倉庫の2階を間借りして、誘拐、拉致、監禁…

ラザロの迷宮/著:神永学

病のために死去したラザロが、布教から帰ってきたキリストによって墓の前で呼びかけられると復活したという「ラザロの復活」という話が、ヨハネの福音書にあるそうです。その後、蘇ったラザロがどうなったのかは分からないらしい。私は、キリスト者ではない…

魔女と過ごした七日間/著:東野圭吾

癌の手術をしてから、約2週間が経つ。手術前にはまるっきり無かった痛みが日に何度も身体の中に走る。痛み出すと暫く身動きが取れない。しかし、無為に時を過ごすのは嫌なので、東野圭吾の『魔女と過ごした七日間』を読んでみた。たかが400頁ほどの小説…

あきない世傳金と銀⑬ 大海篇/高田郁

「あきない世傳金と銀」シリーズの最終巻。浅草田原町に江戸新店を開いた呉服屋の五鈴屋が呉服仲間から外され、呉服が扱えなくなったが浅草太物仲間の協力で再び絹織物も扱えるようになった。 数々の試練を乗り越えた五鈴屋は吉原での衣裳競べで、色ではなく…

死してなお/著:矢月秀作

一人の犯罪者の心理を追求していった警官の物語だ。 主人公は、大分県警本部刑事部刑事企画課捜査支援室に配属された三浦賢太郎は、大分県の警察学校での犯罪捜査の中で知った荻谷信について、既決した事件だったが卒配後も心理分析を続けていた。 萩谷を調…

ブラジャーで天下をとった男 ワコール創業者 塚本幸一/著:北康利

これは、女性下着のワコールの創業者の塚本幸一の伝記である。それと塚本を支えた女傑たちと男たちの物語でもある。 私は、ワコールという会社は創業時からずっとブラジャーなどの女性下着を作っている会社だと思っていた。しかし、そうではなかったことを知…