Trex70’s blog

毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

心霊探偵八雲 いつわりの樹 ILLUSTRATED EDITION/著:神永学

2013年に発売された『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES いつわりの樹』が10年ぶりに文庫化された小説だ。神永学の作品は全作読んでいたつもりが抜けていたのが分かり読んでみた。

赤い左眼で死者の魂を見ることができる青年・斉藤八雲が、同じ大学に通う小沢晴香と出会い、警官の後藤と石井とともに次々と起きる怪事件に挑んでいくサスペンスミステリー小説だ。

神社の境内にある樹齢千年を超える「いつわりの樹」と呼ばれる杉の木の前で刺殺体が発見される。事件はここから始まる。

昔、この木の前で商人の娘と妻がいるのにもかかわらず偽りの契りを交わした武士が原因不明の病で亡くなった。それ以来、この木の前で嘘を吐くと呪われるという噂がたっていた。

被害者が石井の高校時代の同級生だったことにより、石井の高校瀬時代の悲惨な思い出と10年前に神社の階段から転落死した女子高生のことを思い出し、石井は恐怖に怯えることになった。

晴香が友人の様子がおかしいと八雲を訪れるが、その友人は霊に憑依されていた。原因を確かめるため、神社を訪れていた八雲が後藤と石井に遭遇することで2つの事件が結びついていく。

石井が虐められていたこと、石井を好きな真琴も虐めにあっていたこと、八雲自身が赤眼で虐められていたことがストーリーの伏線にあって、被害者と女子高生の2人の霊が絡んで起こった殺人事件をどう解決するのか予測がしづらく面白かった。

考えても仕方が無いことだが犯人はどう裁かれるのだろうか?

タイトルに「ILLUSTRATED EDITION」とあったようにフルカラーの挿絵が巻末にあったが、ストーリーの節目節目ごとにあっても良かったのではと思った。

 

 

 

すばらしい失敗 「数独の父」鍜治真起の仕事と遊び/著:ニコリ編

数独」とは、1から9までの数字を9か所のマス目に入れ、それを一マスの塊とし、その大きなマス目が縦横で3×3マス、つまり9×9マスに、どの縦横にも1~9も数字が重ならないように並べるパズルだ。

ナンプレ」と「数独」とどう違うのか、実際は同じなんだけれど「数独」はニコリの商標登録で、「ニコリ」しか使えない。

ナンプレ」は、数独が発表される前からあり、「ナンバープレイス」の略語。

この本の表紙に無茶苦茶易しい数独の問題が掲載されている。

数独」は、鍛冶真起が「数字は独身に限る」という(私には訳の分からないことを言い出した)言葉から考えられたそうだ。パズル制作やパズル雑誌の出版した株式会社ニコリの社長だが、経営という面では素人同然だったらしいが人を引き付ける魅力があったんだろうと思う。唯々、数独の面白さを伝えたいと活動したおかげで、今や世界中に広がっている。

好きなことだから頑張れたんだなぁと思えた。

 

 

人間臨終図巻Ⅰ/著:山田風太郎

ビブリア古書堂の事件手帖Ⅲ ~扉子と虚ろな夢~』(著:三上 延)で紹介されていたので読んでみた。

十五歳から五十五歳で死んだ、作家、芸能人、政治家、英雄、犯罪者などの著名人の臨終の様子をまとめたもの。

年齢には、数え年と満年齢で数える方法があるが、この本では満年齢で亡くなった著名人たちをとらえている。

名前は知っていても、何歳で亡くなっていたのか、どんな最期だったのか、樋口一葉が極貧の内に肺病で亡くなっていたのは知らなかったし、深く気にもとめることもなかったので、よく調べたものだと感心した。

 

<十代で死んだ人々>

天草四郎大石主税ジャンヌダルクなど11人

<二十代で死んだ人々>

豊臣秀頼赤木圭一郎沖田総司樋口一葉夏目雅子など32人

<三十歳で死んだ人々>

木曽義仲源義経中原中也など9人

<三十一歳で死んだ人々>

ネロ・シューベルト・皇女和の宮など9人

<三十二歳で死んだ人々>

キリスト・坂本龍馬など4人

<三十三歳で死んだ人々>

アレキサンダー大王・北条時宗など5人

<三十四歳で死んだ人々>

浅野内匠頭長矩・ガガーリンなど6人

<三十五歳で死んだ人々>

モーツァルト正岡子規など8人

      ¦

 

<五十五歳で死んだ人々>

ゴーギャンフェノロサなど11人  

 

カラスをだます/著:塚原直樹 NHK出版新書

著者の塚原氏は、カラスの研究の第一人者。

日本のカラスには、嘴の太い「ハシブトガラス」と嘴の細い「ハチボソガラス」がいる。

ハシブトガラス」は、おでこが盛り上がっていて直角で街中に多く生息し、カァーカァーと鳴く。体が大きい。

ハシボソガラス」は、おでこが平で農地や河川に生息し、ガァーガァーと濁った声で鳴く。体が小さい。

街中でゴミを出すと餌を求めて荒らしに現れるのは、体の大きい「ハシブトガラス」の方。

塚原氏は、カラスの肉も食べてみたそうで、臭くって身も固くて不味いとのこと。

また、鼻はあまり効かず、目で獲物を探すので、ゴミの臭さにも平気。ゴミネットに黄色いものが多いのは、他の色よりも認識しくいからだそうだ。

電線に集まっているのは若鳥で成長していくと、集まっての井戸端会議が少なくなっていく。

「へぇ、そうなの。知らなかった。」という面白い情報が一杯だ。

 

<目次>

第一章 カラスを動かす 

第二章 カラスになりきる 

第三章 カラスとしゃべる 

第四章 カラスを食べる 

第五章 カラスを減らす

 

 

 

秋麗 東京湾臨海署安積班/著:今野敏

秋麗(しゅうれい)とは、「秋晴れの心地よい気候でのどかなこと」という意味だが、そういうのんびりした小説ではなかった。

人生の中で秋を迎えるを「白秋(はくしゅう)」というが、まだまだ枯れていない世間に対して一矢報いたいというお年寄り達(ここでは、白秋というより玄冬)が起こした事件だった。

白秋は、中国の五行思想にある人生を「青春 15~29歳」「朱夏(しゅか) 30~44歳」「白秋 45~64歳」「玄冬(げんとう) 65歳以降」と段階に分けた1つ。日本を代表する詩人北原白秋もここからつけられた名前だ。

 

東京湾臨海署(湾岸署)に勤務する安積班の安積、須田、水野が活躍する。

青海三丁目付近の海上で、七十代の男性の遺体が発見される。特殊詐欺の出し子として逮捕された戸沢守雄だった。

殺人事件として本部が臨海署に立ち上がった。殺害の動機が分からないまま、戸沢の釣り仲間を調べていくうちに特殊詐欺事件が関係していることが分かってきた。

本部に召集された以外の他署や交機隊の協力を得ながら、事件の核心に迫り、犯人を自供に追い込むところが、いつもながらの面白い小説だった。

 

 

 

心霊探偵八雲 INITIAL FILE 幽霊の定理/著:神永学

推理する楽しみと八雲と御子柴の師弟コンビの会話が面白い。

赤い左眼を持ち、霊を見たり会話することができる大学生の斉藤八雲とロジカルシンキングで幽霊を研究する八雲が在籍する大学の准教授御子柴岳人のコンビに持ち込まれた心霊現象を解決していくストーリー。

数学者フェルマーの名を騙りネットで犯罪のアドバイスをする謎の人物がいた。そのアドバイスに基づいて起こした人間による犯罪と幽霊が絡んだ3つの事件が起こった。

<目次>

第一話 幽霊の定理 

新築のマンションで起こる怪奇現象。恋人を痴漢の冤罪で喪ったことへの復讐劇。

 

第二話 悪霊の推定

大学女子寮に起こったポルターガイスト現象と幽霊の事件の裏には、隠された殺人事件があった。

 

第三話 怨霊のパラドックス

母親の事故死を誤解し、父親の大学教授を殺そうとした息子がいた。

 

 

教誨/著:柚月裕子

人は誰もが、帰る場所を探しているのかもしれない。それは生まれ故郷かもしれないし、愛しい者がいる場所かもしれない。人それぞれに違うけれど、誰もが自分が返る場所を求めて生きている。

哀しみ。やるせなさ。怒り。この小説の途中から、ずっと私の心の中に占める思いだ。

自分の娘・愛理と近所に住む栞、2人の幼児を殺めてしまった女性死刑囚三原響子の悲しく切ない小説だった。 

プロローグは、不思議な詩のような文から始まる。

本人が知らないまま身元引受人にされていた埼玉に住む吉沢静江のもとに東京拘置所から突然三原響子の遺骨と遺品の引き取り依頼の連絡を受ける。静江にとって、響子は従姪(じゅうてつ/いとこめい)にあたる。(従姪とは、いとこの女の子どものこと。)

遺骨を受け取りに行ったのが静江の娘・香純。響子とは小学生の時に法事で一度出会っただけの関係だった。

三原家に遺骨の引き取りの連絡をするが拒否され、途方に暮れて教誨師だった下間に相談し、三原家の菩提寺にも依頼するが断られる。

『約束は守ったよ、褒めて』、残された言葉の意味を追い続けて、響子の出身地の青森を遺骨を抱いて香純が訪れることになった。

冤罪の話ではないかと思いながら読み進めていったが、読み続けていくうちに、世間や親族、父親、夫など誰一人として味方になってくれず、暴言や仕打ちに追い詰められた末の悲しい犯行ということが分かった。