再生可能エネルギーの送電施設を開発・運営し、5300人の従業員を擁する一部上場(プライム市場?)のジャパンテックパワー(JTP)の内紛を描いた話だった。
経済紙というよりもゴシップ紙に近い出版社が、社長のゴシップ記事を掲載した。その直後、株主総会が間近にもかかわらず社長が失踪した。
それに端を発して、副社長と常務による熾烈な後継者争いが勃発した。
不正行為を命令した副社長に逆らったために本社から九州に左遷された主人公が、社長の意向で本社の秘書室長として2年ぶりに戻ってきた。周囲は栄転と言うが、本人はどの派閥にも属さず、自分の職務だけを忠実に行うと決めていた。
ところが、失踪した社長のゴシップのために記者会見を行った副社長は釈明や経緯の状況説明を一切せず、また、マスコミの質問に対し喧嘩腰に対応し顰蹙を買った。
副社長は、メインバンクの頭取と大株主に自分を社長に推薦するようにと説得工作に奔走した。また、常務は社長になれたら、株主の中国系ファンドに40円の配当金を70円に増額し、優先株を発行し割り当てると空約束した。
しかし、両者とも社長としての器には届かない存在だった。
副社長は、メインバンクと大株主の支援が得られないと分かると早々に辞表を提出し退社した。
常務は部下を恫喝しながら社長になるべく、裏工作を続けた。
副社長、常務から恫喝や誘惑に翻弄される部長などの幹部を横目に、主人公は自身の保身よりも会社が生き残るためにはどうあるべきか、全従業員の生活を守るにはどうあるべきかを考えながら動き続けた。
そんな中で、他の重役たちはメインバンクと経産省と図り、元経産省の官僚を新社長に推薦し、常務の解任動議を取締役会議で提案した。
社長失踪から、元経産省からの新社長の推薦までの一連の流れは、経産省とメインバンクによって、当初から仕組まれていたことだった。
株主総会で、会社側の提案をすべて承認してもらうために中心になって動かないといけない総務部長は、副社長派だったためにやる気をなくし御座なりな対応になった。そのため、秘書室長の主人公は、本来の役割とは異なるが、主人公は不屈の達磨として奔走した。
経済小説だが、国が介入した事業で成功している
事例は少ないので、一時的には乗り切れても将来性の無い会社になるだろうと思いながら最後まで読んだ。