Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

絡新婦の糸 警視庁サイバー犯罪対策課/著:中山七里

女郎蜘蛛とは、水辺に現れる雲の妖怪で、人の足に糸を絡めて水中に引き込むと言われている。題名にある「絡新婦」は、熟字訓。

 

アカウント名<市民調査室>と名乗り、SNS上でフェイク情報を流すものが現れた。

廃業寸前のお年寄りの夫婦が二人で切り盛りしているラーメン店の味噌ラーメン最高とツイートが、あっという間にバズり2週間ほど引きも切らない来客が訪れた。また、有名芸能人が覚醒剤を吸引しているとツイートがあった。ちょうど捜査2課が調査中だった案件だったため、証拠隠滅されないために慌てて逮捕に踏み切る騒動になった。

最初は、ただ食レポと宿レポを真面目にツイートしていただけだったが、その中に悪意を込めたフェイクニュースを密かに紛れ込ませだした。

巨額の不正経理が発覚した大学の理事長が、3000万円もする高級外車に乗っている。脱税でもしない限りは無理ではないかとツイートされた。また、コロナから立ち直りかけていた老舗高級ホテルが破綻寸前というフェイクニュースをツイートされ、宿泊予約のキャンセルが相次ぎ、倒産を恐れた金融機関から融資の引き上げの通告をされたために、経営者夫婦が保険金を返済や従業員の給料に補填してくれと遺書を残し自殺した。

絡新婦が操る子蜘蛛のように、真偽も確かめずに<市民調査室>を妄信、後追いするフォロワーがどんどん出てきた。

事の真偽を判断するためにネットの情報を利用する人は増えた。しかし、いつも正しい情報とは限らない。偏向や政治的思想、悪意や誤解や無理解がそのまま流されていることがある。

ネットの情報を鵜吞みにし、<市民調査室>がツイートしたことはすべて正しいとカルト教の信者のように信じたネット民が、<市民調査室>が取り上げた個人をネット上で叩き始めた。

死者も出ているため、放置するのは危険と判断しサイバー犯罪対策課が調査に乗り出した。

フェイクニュースやデマ投稿は業務妨害、犯罪になる可能性がある。

社会から自分を正当に評価してもらっていないと思う人たちが<市民調査室>のフォロワーになっているケースが多く、リツイ-トし賛同されることで自分の存在意義を感じ、よりのめり込んでいっている。

上場会社の社長個人のスキャンダルがツイートされ、株が連日のストップ安をつけた。オーナー会社だったため、会社の存続が心配される事件に発展した。

 

<市民調査室>は、個人への復讐なのか、ただの愉快犯なのか、サイバー犯罪対策課が調査していくと、足元に犯人がいた。

 

自分が意識しないまま、他人を傷つけるコメントを発信する可能性があること。また、悪意に利用されてしまう可能性もあること。今は、すぐに炎上する時代だから気をつけていかないといけないと思った。