Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

ボーダー 移民と難民/著:佐々涼子

読めば読むほど、日本という国に対して悲しくなっていく。

裏金疑惑で問題になっている自民党の主要メンバーが全員不起訴になろうとしている。大口の脱税をしても罪にならない人たちがいる。反面、子ども食堂が増えてきているが、子どもの6人に一人は貧困家庭であえでいるという調査がある。にもかかわらず、多くの税金を国会の審議・承認もなく、一握りの政治家の一存で外国に何千億、何兆円とばら撒く。一体この国はどこに向いて走っていこうとしているんだろう。

 

これは、佐々涼子が入管問題の神様と言われるほど活動している弁護士・児玉晃一や難民救済活動を行っている人たちの取材をして書いたドキュメンタリー小説だった。

国連では、「難民」と「移民」を次の通りに定義している。

「難民」とは「迫害の恐れ、紛争、暴力の蔓延など、公共の秩序を著しく混乱させることによって、国際的な保護の必要性を生じさせる状況を理由に、出身国を逃れた人々」

「移民」とは「ある場所から別の場所へ、生活のために(多くは仕事のために)、一時的または永久的に移動する人。移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなす。三カ月から十二カ月間の移動を短期的または一時的、一年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的。」

ミャンマースリランカ、イラン、アフガニスタン、アフリカの国々から、政府からの迫害を逃れて日本に救いを求めてやってくる一般の人々がいる。

イランの小学校の朝礼で、教師たちがアメリカの国旗を燃やして、「ホメイニ万歳、アメリカに死を」と叫び、子どもたちに復唱を要求した。それに対し、「そんなことをするために、高い学費を払って学校に来ているわけじゃありません」と教師に言った。それだけのために「反政府思想の持ち主」と言われ、命を狙われるようになり、一家で国を脱出してきた。いったん観光ビザで入国したがオーバーステイとなり、十条にある入管施設に収容されてしまった(入管とは、2019年入国管理局から改称した「出入国在留管理庁」をいうが、狭義では、外国人を収容する施設を指す)。父親は男性房、母親と子供二人は女性房、ぎゅうぎゅう詰めの部屋でトイレは部屋の片隅にあって壁もなく、しゃがめば腰のあたりまで隠れるけど、臭いは漏れるし音は周りに筒抜けの人権意識などないに等しい収容所に入れられた。

一家に退去強制令書がでた。しかし、国外退去でイランに戻されると命の危険があるため、「難民」申請を行った。まるで映画の世界のように、イランでは市民が秘密警察のような組織に暗殺されたり、交通事故に見せかけて殺されたりしている。十代の娘が反政府的言動をし投獄されたこともある。

弁護士や市民団体が、劣悪な環境の下、収容者に対し日常的に暴力が行われており、電話を取り次ぐにも「胸を揉ませろ」と迫るなど、職員による強制わいせつや強姦もあると日本の入管の実態として報告している。心ある職員は、耐えられずに辞めていく。

この家族は、結局、裁判で敗訴し難民認定はされなかった。一家のもとにはイラン大使館から「早く訴訟をやめるように」と脅しの電話があり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、危険が迫っているとの独自の難民認定をして、ノルウェーを受け入れ先にして逃がした。日本では認定されなかったのに。

2014年に牛久の入管施設で体調の急変を訴え続けたのに放置され亡くなったカメルーン人がいた。その家族が、2017年に国と牛久の入管施設のセンター長を相手取って裁判を起こした。地裁は、入管の対応に不備があったとして165万円の賠償を国側に命じた。(黒人だからなのか、命の値段が165万円?)。また、DV被害を訴えて交番に出向いたスリランカ人のウイシュマ・サンダマリさんは訴えは無視されたうえにオーバーステイの疑いで逮捕され、名古屋入管に収容された。体調の不良を訴えたにもかかわらず、適切な医療を受けずに亡くなって、親族が日本政府を訴えている。

白人と異なり、アジアやアフリカから来た人たちは、肌の色の違いだけで差別され、犯罪者でもないのに入管施設に収容されてしまうケースが多いのには驚いた。また、難民申請をしてもほとんどが通らない。2021年で、日本の難民認定率は74人(認定率0.7%)、ドイツは38918人(25.9%)、カナダが33801人(62.1%)、フランスが32571人(17.5%)、アメリカが20590人(32.2%)と日本の低さは際立っている。

入管法改正に当たって、特定非営利活動法人「難民を助ける会」元会長で、政府の難民審査の参与員の柳瀬房子は、2005年から17年間で担当した申請の案件は2000件以上あったが、認定すべきと判断できたのは6件だけと国会で答弁している。しかし、書類のうえでの判断で、面接や聞き取りはしていないという(一人に集中しすぎている。難民認定をすると次の審査の案件が回ってこなくなるというのが実態と他の審査員が述べている。)

日本で難民として認められない人たちは、非正規滞在者として入管に囚われる。その後、ビザを与えられないまま入管から「仮放免」として出される人もいる(何年も収容されたままの人もいる)。しかし、働くことが許されず、社会保障もない。行政に手を貸してもらう事も出来ない。どうやって生きて行けというのだろう。

日本に来るのが悪いという考えを持つ人もいると思う。

バブルで人手が足りなかったときは、こういう人たちを目を瞑って使い、バブルが弾けると切り捨てた。今は人手が無くって、困ってきている。安い労働力として最低賃金、もしくはそれ以下で働かせているところもある。不法移民が多くなり、トランプ元大統領のように移民や難民を受け入れないところもあるが、日本はそれ以前の問題だ。

今は、日本の経済成長の鈍化によって、日本以外の地域で働いた方が良い。日本で働くメリットが感じられないと、日本に働きに来る人がどんどん減ってきている。

国連から何度も改善するように勧告を受けても、無視し続けている国。どこが先進国と言えるのだろうか。白人以外の外国人に冷たく、日本人にも冷たい国。このままでいいのだろうか。

 

涙が止まらなかった。このブログを読んでいただいている人がいたら、是非、この本を読んでいただければと願います。