Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

君といた日の続き/著:辻堂ゆめ

すごく感動した小説だった。

小学生で亡くなった娘への思い。別れた妻への思い。もっと娘にしてあげることがあったのではないかという自分を責める気持ち。別れた妻の気持ちに気づけなかった自分。

「夫婦の愛、両親の娘への愛、様々な思いや温もり、悲しみ、思いやり」が伝わってきた。

主人公は47歳の友永譲、自動車ディーラーの営業職。

娘の美玖は脳に腫瘍ができ10歳で亡くなった。譲は、娘の死をきっかけにぎくしゃくしてしまった妻・紗友里とも別れて一人暮らしをしていた。

譲は生きる気力を無くし、診断書を提出し半年以上休職していた。自殺をするつもりで練炭やガスコンロなどを買い込んでいたが、部屋を目張りするガムテープを買いそびれていたのに気づき、アパートを出た。その時、雨が降っているにもかかわらず、ずぶ濡れで路上に座り込んでいた少女と出会った。譲は、そのままにしておくこともできず、声を掛けた。少女は、記憶の多くを失っていて、自分は過去から来たと話した。

行くところもなさそうなので警察に連れて行こうかと思ったが、少女は警察を嫌がったので、譲のアパートに連れていくことになった。そこから、二人の奇妙な共同生活が始まった。

少女は、ちぃ子と名乗った。初めのうちは、半信半疑だったが、少女は1980年代からタイムスリップしてきたようだった。ずぶ濡れのままだったので、譲は亡くなった美玖の遺品を入れた段ボール箱から出してきた衣類を着させてみた。

ちぃ子を見ていると美玖の生きていた頃を思い出し、悲しみも思い出した。

夏休みの1ヶ月ちょっとを過ごすことになったちぃ子と楽しい思い出を作ろうと、妻の紗友里や美玖と3人で過ごしたことを日々を思い出し、ショッピングやディズニーランドなどに連れて行き、また、美玖とできなかったお絵描きやクッキングも一緒に楽しんだ。

ちぃ子の話す内容や時代から、何かの拍子にタイムスリップしてきたように思え、また、譲が小学生の時にただ一度公園で遊んだだけだったが、恋心を抱いた少女のように思えた。

ちぃ子は母子家庭で育ち、母親が入院したため一時養護施設「愛の家」で過ごしていた。そこで友達になった少女が殺され、その少女が履いていた赤い靴を探しているときに、タイムスリップし、自殺をしようとしていた譲の前に現れた。

ちぃ子は、少女時代の別れた妻・紗友里だった。なぜか小学生の時に淡い恋心を抱いた譲のもとにちぃ子は現れた。ともに初恋の相手同士だったのだ。

偶然のようで偶然でない、神様のいたずら、なのか。

「君といた日」「君といた日の続き」

過去から見た今は、未来。

 

<もくじ>

第一章 雨、ときどき、女の子

第二章 似ているようで

第三章 父と娘と

第四章 ちぃ子、君は

第五章 ささやかな時の

第六章 だから、ここに

第七章 明日へ