三浦しをんの本を久々に読んだ。三浦氏は女性の筈だが、読んでいると男性が書いたのではないかという気がしてきた。しかし、読み進めていく内に心のうちの表現は、やはり三浦氏のものだと感じた。ネットリもサラッともしすぎ、ほのぼのと表現されていると感じた。
主人公は、都内の老舗・三日月ホテルに勤める続力(つづきちから)と書家の遠田薫の二人。
続(ツッチー)は、ホテルの宴会場で行われる「お別れ会」の招待状の筆耕を依頼するために遠田書道教室を訪れた。遠田薫は筆耕係として登録はされていたが、これまで依頼したことが無かったためにどのような人物かもわからず、退職していた前任者にも訊ねてはみたがはっきりしないので、お願いがてら直に会いに行った。
そこで遠田に手紙の代筆を頼み込む小学生・三木遥人(ミッキー)と出会った。遠田は先代が行っていた代筆業を副業として引き継いでいた。ミッキーは自分を虐めから救ってくれた友達が遠方へ引っ越すことになり、手紙を渡したいと思ったが自分で書けないため代筆を依頼していた。しかし、なぜか遠田は書き渋っていた。ツッチーは遠田と一緒にミッキーの話を聞き、手紙の文面を考えることになり、遠田がミッキーの字を真似て書き上げた。
遠田の書いた漢詩の七言絶句を見て、書道には素人だったツッチーは書の深さを感じ、また、遠田の書の素晴らしさに感激した。
その後、筆耕の依頼を兼ねて書道教室を覗いたり、代筆の手伝いをすることで遠田と親しくなっていった。しかし、突然、遠田から「筆耕係を辞退する」というメールを受けて戸惑い、理由を聞くために書道教室を訪問した。
遠田は元ヤクザで前科もあり服役していたことも分かった。
私も一時期仕事の関係で、何度か書展を見学に行ったことがあるが、書から感動が伝わるという経験はしたことがなかった。自分の感性の無さをまた知ることになった。