Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

心霊探偵八雲6 失意の果てに/著:神永学

心霊探偵八雲シリーズの第6作目。

斉藤一心の高校時代の友人の新井医師が勤務する病院に幽霊が出るという。その幽霊に追い詰められて、人が死んでいるという。一心に伴われて、八雲と晴香が件の病院を訪れ、病院関係者に聞き取りをし、現場を確認した。病院で、晴香は顔が真っ黒で良く分からない少女の霊を見た。八雲は、霊は人を呪ったり、傷つけたりできないというが、真相は分からない。

やっと逮捕した七瀬美雪が後藤刑事と石井刑事を拘置所に呼び出し、八雲の叔父の一心を殺すと殺人予告をした。裁判前で、拘置所に収監されている美雪が殺人を行うのは不可能なことだった。しかし、一心は刺されて意識不明になり、件の病院に救急車で運ばれた。病院に着いた時には、自発呼吸もあり脈もあったはずだったが、病院の説明では心肺停止状態で運ばれてきたという説明があり、事実と食い違っていた。

脳死状態になった一心のベッド脇には、顔の真っ黒な少女の霊が立っていた。

犯人は一体誰なのか。美雪が拘置所を抜け出して、犯行に及んだのか。後藤と石井は拘置所を訪問し、当日の美雪の行動を調べた。拘置所を抜け出せるとは思えないが、なぜか現場には美雪の指紋が残されていた。

八雲は一心の脳死状態を知り茫然となり、闇の世界に引き摺り込まれかかったが、晴香の「会いたい」のたった一行のメールで立ち直り、犯人捜しに取り組むことができた。

八雲が調べていく過程で、犯人は手術を執刀した榊原医師ということが分かったが、榊原の娘は重い心臓疾患を抱えていた。移植手術の必要に迫られていて、一心の心臓を狙っての犯行ということが分かった。

少女の霊は、代わりの心臓が欲しいと願う榊原医師の娘の生霊だった。

美雪と同様に、榊原は赤い両目を持つ八雲の父親に唆されていた。

八雲は移植に同意し、脳死状態になった一心の心臓は少女の中で生きることになった。

 

霊の仕業で大きな事件が起こったのではなく、人の心が起こしたものだった。

人間の業について、考えさせる物語だ。