Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

魔女と過ごした七日間/著:東野圭吾

癌の手術をしてから、約2週間が経つ。手術前にはまるっきり無かった痛みが日に何度も身体の中に走る。痛み出すと暫く身動きが取れない。しかし、無為に時を過ごすのは嫌なので、東野圭吾の『魔女と過ごした七日間』を読んでみた。たかが400頁ほどの小説だったが、3日もかかってしまった。

題名の「魔女」って、何だろう?と思っていると、文中に「エクスチェッド」(作者の造語のようだが)という言葉が何度か出てきた。生まれつき高い知能を持つ「ギフテッド」だけでなく、生まれながらにして脳に疾患を抱えていることで特殊な能力を持ってしまった子どもたちをいうらしい。サヴァン症候群もその一種といえる。

私が出会った子どもの中にも、高校数学がスラスラ解ける小学1年生や、コミュニケーションはかなり難しいが国立の大学院で物理を専攻していた子がなどがいたが、この子たちも含まれるのだろうか。

主人公の月沢陸真は、図書館で男の子が乗った車いすを押す綺麗のな女性と出会った。

女性の名は、羽原円華。陸真が乗ったエレベーターの閉まろうとするドアを赤いけん玉で止めた。けん玉は偶然止まったのか。また、円華は、降り出した雨が何分後に止むと言い当てた。何かのマジックだったか、それとも超能力なのか。円華のお陰で陸真は雨に濡れずに帰宅することができた。

陸真の父親・克司の水死体が多摩川で見つかった。克司は元刑事で、見当たり捜査のスペシャリストだったが、AIの導入で人員削減にあい、新しく配属された部署では馴染めずに退職し警備会社で働いていた。克司の残したノートや通帳の入出金記録を調べていくなかで、訪れた数理学研究所で再び円華と出会った。数理学研究所は、エクスチェッドを研究していた。ここで、陸真は、義理の妹・照菜と初めて対面する。

克司はなぜ殺されたのか。特捜本部も立ち上げられたが、克司の死の真相を推理する陸真と純也(陸真の友人)と円華によって殺害遺棄現場が特定された。

また、解決済みの17年前のT町一家三人強盗殺人事件は警察内部で作り出した冤罪で、このことが原因で克司が殺されたことが判明した。

17年前の殺人事件は、現場に残されたDNAからゲノム解析し、犯人を特定していた。警察にデータとして存在するはずのないDNAによって作られたゲノムからモンタージュを作成していた。警察は、公園や駅などに捨てられたタバコの吸い殻やジュースの空き缶などから、一般人のDNAを密かに収集していた。当然違法行為になるが、全国民のDNA型データベースの構築を目論んでいた。

克司は警察を辞めた後も17年前の事件を追いかけていて、冤罪に気づいたのだった。冤罪の露見を恐れる警察内部の人間の手で、克司は殺されていた。

 

AIの発達で人の手による仕事が減っていく。科学の進歩によりDNAからのゲノム解析により、個人情報が好むと好まざるに拘わらず暴露されてしまう。

監視社会、小説の世界だけでなく、実際に迫ってきていることを作者は伝えようとしているように思えた。