Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

復讐の協奏曲/著:中山七里

園部信一郎は、14歳の時に近所の幼女を誘拐しバラバラにして地域に置いたという猟奇殺人を犯していた。少年法に守られ、殺人罪が適用されずに少年院に収監となった。更生し院を出たあと、名前を御子柴礼司と変え、司法試験に合格し「御子柴法律事務所」を開設していた。

過去の裁判で、御子柴自身が過去の罪を暴露した。「この国のジャステス」と名乗ったブログを見た一般市民から830通を超える大量の懲戒請求書が届いた。そこで、御子柴はブログ主を炙り出すために、懲戒請求者全員に名誉棄損と業務妨害で損害賠償請求をする旨の内容証明書を送り付けた。その業務を担当していた事務員の日下部洋子が、殺人の罪で警察に逮捕された。御子柴は、洋子の冤罪を晴らすために担当弁護士になり、この物語が展開する。

洋子がカフェで知り合った南雲涼香から紹介され、付き合っていた知原徹矢が殺された。その現場近くに捨てられていた凶器のナイフに、洋子の指紋だけが付いていた。

洋子は、知原とレストランで食事をした後、まっすぐ自宅に戻っていたためにアリバイの証明ができなかった。

冤罪を晴らすために行動を起こした御子柴は、洋子の私生活をまるで分っていないことに初めて気が付いた。そこで、洋子の履歴を遡って調べていくうちに、洋子は御子柴が郷里の福岡で起こしたバラバラ殺人事件の被害者と友人だったことが分かった。何のために<死体配達人>御子柴の事務所で働きだしたのか、疑問を持ちながらも被害者の周辺を調べていった。

被害者の知原は、アルアディア・マネジメントの企業コンサルタントだったが、会社に怒鳴り込まれたり、フロアで刃物を振り回されたり、自殺した女性もいるほど、多くの女性とのトラブルを抱えていた。粉飾決算や社員の不祥事など黒い噂のある企業に勤める女性に女衒まがいに巧みに近づき、必要な情報を引き出した後はドライに捨てるという女性から見ると最低な人間だったことがわかった。

指紋のついたナイフのトリックを解明し、法廷の場で真犯人を暴き出す。

真犯人は自殺した女性の妹だった。

ブログ主の「この国のジャスティス」も警察の協力と宝来弁護士の調査で判明する。ジャスティスを後ろで操っていた人間がいた。それは、御子柴が弁護士になってから、バラバラ殺人事件の被害者家族に慰謝料を送り続けていた母親だった。家族の恨みは消えるどころか燃え盛っていた。

 

善良な人でも、どこかでタガが外れ犯罪者になり、殺人を犯したりもする。また、被害に遭った家族の恨みはいつまでも消えることが無い。御子柴が過去の罪の残酷さに向き合う辛さ、自分という人間について葛藤し、少しずつ変わっていく姿が良く描かれていると思う。