これは、9歳で呉服屋へ奉公に上がった「幸」の成長の物語だ。シリーズ化し、13巻も続いている。高田氏の本は、初めてだが面白かった。
摂津の武庫郡津門村に学者・重辰の子として生を受けた幸。兄・雅由、妹・結とともに育つ。父の重辰は、凌雲堂という私塾を主宰し、津門村はもとより、今津村、川西、鳴尾のほうから生徒が通うようになっていた。
享保17年の夏、長雨、冷夏、旱魃と異常気象が続いた田畑を頭上を覆うほどのウンカの大群が襲い米作は大凶作となり、西国諸藩は飢饉に見舞われた。
飢えを凌ぎながら生活していた一家を不幸が襲った。俊才と期待されていた兄・雅由が病で亡くなり、続いて父・重辰も亡くなってしまう。残された母・房の生家は貧しく、戻るわけにもいかなかった。そこで、房は妹の結だけを連れて住み込み下女として働くことになり、幸は大坂天満の呉服商「五鈴屋」の女衆として働くことになった。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛と五鈴屋の三男・智蔵に才を認められ、商いについて学んでいった。
幸は、父から「商は詐(いつわり)なり」と教えられて育っていたが、治兵衛から少しずつ教わっていくうちに、商いの面白さを知ることになった。
五鈴屋は、子ども夫婦を亡くした富久が3人の孫を育てながら治兵衛に支えられ、商いを続け、孫の徳兵衛が店主となっていた。
徳兵衛の廓通いが止まず、富久は嫁を迎えることで落ち着かせようとしたが、落ち着いていたのは束の間だった。嫁の持参した支度金も女遊びにつぎ込んだため、嫁に愛想を疲れ離縁となった。
離縁となったために嫁の実家に支度金を返さないといけなくなった五鈴屋は、返済のめどが立たずにいた。
商才があり、実質五鈴屋を支えていた弟・惣次はそんな兄とは犬猿の中になっていた。
これから、五鈴屋はどうなっていくのか、幸はどうなるのかと思わせるところで話が終わり、続きを読もうという気にさせられた。