老舗糸問屋の嶋屋元当主・徳兵衛は、還暦を機に身代を息子・吉郎兵衛に譲り、巣鴨村で隠居暮らしを始めた。ゆっくりと余生を送れると考えた徳兵衛のところに、孫の千代太が次から次と厄介ごとを持ち込んできた。
最初は犬、次いで仔猫、とうとう子供まで拾ってきた。
千代太にすれば友達として連れてきたのだが、最初は兄妹二人、それが六人に増え、いまや十七人。さらにはその親の面倒にまで首を突っ込む羽目になり、優雅な余生は泡となって消え失せた。
この隠居家では、徳兵衛自身が手掛ける組紐屋の「五十六屋」と孫や子供たちが営む子供商いの「千代太屋」の二つの商いを回しており、徳兵衛の妻・お登勢が支障を務める手習所「豆堂」も開いていた。ここで起こる物語だ。
<目次>
①めでたしの先
千代太が最初に拾ってきた勘七と妹なつの父親・榎吉は家族を置いて、3年もの間、家を出ていた。組紐職人の榎吉が戻ってから勘七の機嫌が悪くなった。毎週のように父親は組紐を収めるために出かけていた。父親が家から出ていた3年の間に新しい家族を持ったと勘違いした勘七は榎吉と揉める。
②三つの縁談
末娘のお楽は、十八で嫁いだが亭主が病没し嶋屋に戻った。お楽は、商家の奥向きなど一切できないお気楽な娘だった。そんなお楽に縁談が持ち込まれた。ところが、お楽のお腹にはややができていた。父親は錺職人の秋治。母お登勢と兄吉郎兵衛と次兄の政二郎は頭を抱えた。
③商売気質
錺職人の秋治を徳兵衛に認めさせようと、千代太、お登勢、吉郎兵衛、政二郎、女中のおわさ達は知恵を絞った。
④櫛の行方
徳兵衛は使用人同士の恋愛事を嫌った。
おわさの息子・善三を思う、組紐職人のおくに。善三は密かに思う子連れの未亡人おむらに送るつもりで櫛を買っていた。
⑤のっぺらぼう
瓢吉と弟逸郎の両親は、父親・杵六の浮気が原因で離婚した。父親に二人は引き取られていたが、その日の稼ぎをすべて酒と女につぎ込むため、幼い瓢吉が生活費を稼いでいた。そんな瓢吉のところに別れた母親・およねが一緒に暮らそうと声をかけてきた。
弟の逸郎は、母親を覚えておらず、のっぺらぼうの顔をしてると瓢吉を悩ませた。
⑥隠居おてだま
自由奔放に育てた末娘の お楽を錺職人の秋治と添わせるために、お登勢たちが考えたことが裏目に出て、徳兵衛が自分を嶋屋から勘当した。
次回作は、どんな話になるんだろうか。待ち遠しい。