Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

あきない世傳 金と銀⑪ 風待ち篇/著:高田郁 

13巻まで続くシリーズもので、②の早瀬篇~⑩の合流篇を体調不良が続き、ブログを書く気が失せている間に読んでしまったので省略する。

幸という少女が、五鈴屋という呉服太物商に女衆として奉公に上がり、から番頭治兵衛利発さを認められ商いの考え方を教えられたのち、14歳の時に五鈴屋4代目当主徳兵衛の後添いとしてと迎えられる。しかし、4代目当主はどうしようもない放蕩三昧で、五鈴屋を倒産寸前にまでにした挙句、亡くなる。幸は17歳で寡婦になる。4代目当主の弟惣次は、幸を娶ることを条件に5代目当主とる。5代目とともに五鈴屋を盛り返させる。しかし、絹糸の仕入れ先と揉め、5代目は出奔する。五鈴屋を存続させるため、5代目の弟智蔵と再婚し、6代目当主となったが、智蔵は病死する。五鈴屋は、当主不在となった。大阪には、女の店主は認めないという「女名前禁止」という決まりがあるため、幸が当主にはなれなかった。しかし、3年間の猶予を呉服商組合から認められ、7代目当主となり江戸店を出店する。

妹の結に裏切られ、また、五鈴屋の発展を妬む呉服商組合からも除名され、呉服を扱えなくなってしまい最大の窮地に陥る。

 幸と五鈴屋は、窮地から脱するため、太物商としての道を歩むことになった。手代の賢輔が考えた浴衣地の図案を型彫師の梅松と誠二が型紙に彫り、型付師の力蔵が浴衣地に染める。力蔵は、浴衣地の表と裏にくっきりとした紋を浮かばさせるために両面糊置きという染めの新手法を開発する。

幸は、江戸の人々の暮らしに根付き、息長く愛用され、後の世にも伝えられることを願い、染めの工夫を浅草太物仲間に無償で教えた。たびたび大火に見舞われていた江戸の人々にも受け入れてもらえるように、火の用心の紋様の「拍子木」を浴衣地に染め、仲間で一斉に販売した。

江戸に出店して9年目を迎えた五鈴屋に、仕事ぶりを長年見続けていた勧進相撲の興行に携わる砥川額之介が、力士28人分の浴衣の注文に現れた。

今と異なり、勧進相撲は男性の娯楽で女性が見ることを禁じられていた。その為、幸は見たこともなく、当然奉公人も見たことがないため、最初は注文を受けることを断った。しかし、いろいろな人の知恵を借り、賢輔が図案を工夫した。幕内の相撲取りの浴衣は、親和文字という書体で四股名を染めぬき、幕下にはツッパリの手形を染め抜いた浴衣を作成し、浅草太物仲間とともに売り出した。

当時の江戸では、歌舞伎と相撲と花火が最大の娯楽だった。その為、力士の四股名や、つっぱりの手形を染めた浴衣はすごい人気を博した。

 

どんなに逆境に遭おうともメゲルことなく、笑顔を忘れずに、前を向いて進み、知恵を絞り、創意工夫を凝らし、客も店も奉公人も太物仲間も皆を幸せにしていこうとする幸に、いつも感動を覚える。五鈴屋が再び呉服を扱えるかどうか、次回作に期待したい。