Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

香港警察東京分室/著:月村了衛

ICPO(国際刑事警察機構)を仲介役として日本の警察庁と香港警察の香港警務処との間で「継続的捜査協力に関する覚書」が締結され、警視庁に組織犯罪対策部国際犯罪対策課特殊共助係が新設された。日本からは、管理官として水越真希枝警視、その下に七村星乃警部、嵯峨秋人警部補、山吹蘭奈巡査部長、小岩井光則巡査部長の4人が配属された。香港からは、隊長としてグレアム・ウォン警司、その下にブレンダン・ゴウ総督察、ハリエット・ファイ見習督察、シドニー・ゲン警長、エレイン・フー警長の4人が配属された。

水越警視は警察庁のキャリア官僚としては「とんでもない変人」と形容され、山吹巡査部長は元ヤンキーで言動が粗雑、また、嵯峨警部補は入庁前に暴力団からスカウトされかかったこともあるなど癖のある面子が揃っており、警察内部では各署の厄介者を集めて香港側の接待役をさせるもの、「香港警察東京分室」と揶揄されていた。

2021年4月22日に、九龍塘城市大学の元教授キャサリン・ユーが大衆を扇動してデモを実行し、警察機動部隊と衝突し多数の死者が出た。

ユー元教授は助手を殺し、日本に潜伏しているとの情報が入った。

初の共助事案として、ユーを殺人容疑で逮捕し、香港へ送還する任務を与えられた。

ユーの足跡を追うため日本と香港の警察官がコンビを組む。しかし、香港警察は民主活動家を逮捕のために殺人容疑の口実を用いているのではないかという疑惑が日本側メンバーにあり、チームはギスギスしていた。

捜査を進めていくうちに、ユーが金塊を密輸するサーダーンと関係していることが分かってきた。しかし、ユーを師と慕うハリエットには信じられなかった。

ユーの居場所を確認のために嵯峨と山吹とハリエットは、サーダーンのアジトに潜入した。そこに敵対する黒指安が襲い掛かり、銃撃戦に巻き込まれた。

SITの応援で、3人とユー元教授は助かったが、救急病院に運ばれたユーは姿を消してしまった。

サーダーンと黒指安はどちらも中国の黒社会(闇組織)だった。中南海(北京の政府)の中で政権側と反政権側の対立があり、2つの組織は利用されていたにすぎなかった。

香港返還後の一国二制度の中で翻弄される香港警察のメンバー。警察官として自分はどう生きればいいのか、背筋を伸ばして歩いていけるかどうか、特殊共助係チーム全員に問われた。

4.22事件はユー元教授の若き日の出来事に端を発していた。民主化運動なのか、私事に撒きまれた結果の大事だったのか。

日本も見えない形で自由が徐々に失われていってるのではないかという作者からの想いを聞いた気もした。

自由な社会のありがたさと決断する勇気の大切さについて考えるきっかけになった。