Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

千里眼 ブラッドタイプ完全版/著:松岡圭祐

2006年に出版された本を読み直してみた。岬美由紀の千里眼シリーズ11作目だそうだが、他の作品と少し色合いが異なる。美由紀が派手に暴れ回るというシーンは出てこない。中学生の乙女のように、同僚の臨床心理士嵯峨敏也への熱い思いが全体に溢れている。

冒頭でいきなり日本の防衛大臣の「B型は目立ちたがりで衝動的に行動するから、切込み隊長に向いているのだろう。半面、撃たれやすいから本隊とは遠ざけられているようだ。本隊には服従タイプのA型が多く、士官は一心不乱に突き進むO型を採用しているらしい」とトンデモ発言が飛び出し、米軍関係者から失笑を浴びる。これは、血液型で性格が変わるという説に科学的根拠がないにも関わらず、古くから大衆文化(迷信)として存在している血液型性格分類に起因している。

血液型性格判断(分類)が過熱し、会社を首になったり、B型とは結婚したくないといったB型人間への差別・偏見が広がる。また、白血病に対しても、化学療法、骨髄や臍帯血移植といった治療が普及し、不治の病とは言えなくなってきているのに、治らないと絶望する患者本人や希望を失う家族がでてきている。

嵯峨が白血病を(再)発症し入院する。また、入院先の病院で、骨髄移植で助かってもB型に血液型が変わってしまうのが嫌で移植を拒む女性を知る。

美由紀は迷信となっている血液型性格分類白血病に対する間違った認識を払拭するために活躍する。

千里眼と言われながらも、幼児期の悲惨な体験で唯一男女の恋愛感情だけが読み取れなかった美由紀。嵯峨を思って泣きながら必死に頑張る姿に感動,した。また、白血病寛解に向けての治療の大変さと白血病になった人の心の葛藤が自分自身にあったことのように感じられて心が震えた。

心の支えとして一緒に寄り添ってくれるカウンセラーのような存在の大切さも、自分自身もカウンセラーなので今まで以上に良く理解できたと思う。

約570頁あったが、読み応えは十分にあった。