Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

降臨 聖拳伝説Ⅰ/今野敏

古代(1200年前)から、天皇家を裏(闇)から支え続けた一族の暗闘の物語だった。

天皇家が、国内の豪族の長ではなく、大陸から渡ってきて日本を治めたということを前提にしている。また、大陸説にも近江朝や出雲朝、九州王朝等があるが、ここでは拘っていない。

 

主人公の私立探偵・松永丈太郎のもとに奇妙な身辺調査の依頼が舞い込んだことから、物語が始まる。記者だった松永は、政界汚職を調べていたが、上の圧力で記事は改竄された上に恋人まで襲われ、記者を辞め、私立探偵になっていた。

対象の史学科の大学生・片瀬直人は、哲学科の高田常造教授の一般教養の講義を聴き、古代インド文明に興味を持ち、教授から文献を借りたりしていた。特に釈迦の武術に興味を持ち、インド旅行を繰り返していた。

釈迦が法を説いて歩いたのは、無法の時代、腕に覚えのない者が説教をしても誰も聞こうとせず、逆に殺されてしまう心配もあった。

釈迦は、七大仙人のひとり、ヴィシュバーミトラに師事し、学問と武術を伝授された武術の達人だったという事実が、釈迦の前世に関する物語を集めた『ジャータカ』という仏典に記録されている。

片瀬は幼い頃に両親を殺され、代わって養育した祖父から古代インドの超絶秘拳を教え込まれていた。
政界の黒幕として君臨する服部宗十郎は松永を雇い、片瀬をつけ狙っていた。

片瀬と宗一郎は、1200年前に渡来し天皇家を支え続けた秦氏の末裔だった。

秦氏は文武に優れ、荒服部(あらはっとり)とその他の服部に別れていった。荒服部には、宝剣が天皇から授けられていた。

宗一郎は、服部の支流の末裔だったが、あるとき祖先が荒服部を襲い、取って代わって政権の中枢を担うようになっていた。

荒服部の最後の生き残り片瀬直人が持つ宝剣を手に入れようと、宗一郎率いる服部一族は孫娘の水島静香を直人に近づけるように目論んだ。

総理大臣を補佐する内閣調査室下条も宝剣を手に入れ、また、服部一族を壊滅させようと自衛隊と警察隊まで巻き込む壮絶なバトルが始まった。

日本支配をめぐる闇の権力闘争に、片瀬直人と松永は巻き込まれ、松永は負傷し、直人の恋人は被弾するが、服部一族は滅んだ。

 

今野氏の拳法が絡んだ小説としては大人しかったが、面白い内容だった。3部作ということなので、次作を早く読みたい。