日本の恐竜研究の第一人者の小林快次博士が纏めたティラノサウルス類に関する解説書だ。
恐竜は、中生代の三畳紀後期(約2億3000万年前)に、エオラプトルやエオドロマエウス、パンファギアの恐竜類から始まったと言われている。三畳紀の終わりに,大量絶滅があったが、生き残ったものがジュラ紀、白亜紀を通して進化し、隕石が衝突する6600万年前までの約1億7000万年の間地球上を支配した。
ティラノサウルス類の進化の過程で、つぎのように分けられる。
三軍:ジュラ紀中期バトニアン期(約1億6830万年~約1憶6610万年前)に誕生した「キレスクス、グアンロング、プロケラトサウルス、シノティラヌス」。体が小さい初期のティラノサウルス類、
二軍:ジュラ紀後期(約1億5210万年前~約1億4500万年前)に誕生、「ビスタヒエヴェルソル、アパラチオサウルス、ラプトレックス、ドリプトサウルス、シオングアンロング、エオティラヌス、ストケソサウルス、ディロング」など、三軍よりも大きい。
一軍:白亜紀後期カンパニアン期(約8360万年前~約7210万年前)に誕生し、「ティラノサウルス、タルボサウルス、ダスプレトサウルス、アリオラムス、アルバートサウルス、ゴルゴサウルス」などで、がっしりした頭を持ち巨大化した。
ティラノサウルスは、約6800万年から約6600万年前まで生息していたと考えられている。
ティラノサウルスの寿命は28歳前後と考えられている。
年齢と体重は、若年期:2歳くらいの時は30キロ程度、亜成体:13歳くらいの時は1トン弱、若成体:18歳くらいの時は3~4トン、成体:22歳で5トン程度、老成体:28歳で6~14トンになったようだ。急成長時の成長速度は、1日あたり2.1kgの体重増加になると考える学者もいる。筋肉から、歩くスピードはほぼ人間と同じだが、走ると時速28km前後と予測され、瞬発力があり、腐食ではなく、狩りをしていたと思われる。
狩りに利用できたかどうかは不明だが、耳の蝸牛管が長いことから低周波を聞き取れる耳を持っていた。目も正面についていて両眼視出来ていたから視野も広く、立体的に空間をとらえることができ、待ち伏せではなく追跡して獲物を捕らえていたと推測される。また、体に対して臭球が大きく、臭覚が良かったと考えられ、遠くの獲物を感知できるだけでなく、草陰に隠れている獲物や見えづらい朝まずめの時間帯でも獲物を捕らえることができた。
今まで、発掘されたティラノサウルスからは、羽毛があった痕跡は見つかっていないが、ティラノサウルス類と言われる恐竜からは、羽毛の残った状態のものも発掘されている。
なお、捕食対象の植物食恐竜の、ケラトプス科は内陸部に、ハドロサウルス科は川の近くに住んでいたことから、食餌のためにはどこへでも行っていたのが分かる。
<目次>
第一部:「ティラノ軍団の現在」
ティラノサウルス類全種についての最新研究を紹介。
第二部:
第一章:迷子になったティラノサウルス
第二章:ティラノサウルスのファッション事情
第四章:ティラノサウルスの成長と老い
第五章:ティラノサウルスの身体測定「武器」
第六章:ティラノサウルスの走行距離と狩り
第七章:ティラノサウルスは共食いをしていたのか
第八章:テラノサウルスの住処
第九章:テラノサウルスの来日
おわりに
特別付録:ティラノサウルス座談会
ティラノサウルス類の卵殻から、ティラノサウルスの卵の殻も固いと考えられる。この事から、ティラノサウルスの子育ては、鳥のような抱卵ではなく、少し地面に埋もれさせ、地熱と太陽光で孵ったと考えられる。傍で見守っていたと思われるが、実際のところは分からない。
10年後、20年後には研究が進んで、解釈が変わってしまうかもわからないが、良く纏まっていて、素晴らしいと思った。