Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

春、死なん/著:紗倉まな

これは、当時20代だった紗倉まなが書いた、野間文芸新人賞の候補に挙がった小説だ。20代の紗倉まなが、老人の日常や性について書いているがよく考えついたものだと思った。

タイトルの「春、死なん」は作中にも紹介されているが、西行法師が詠んだ句の『願はく花のしたにて春死なん そのきさらぎの望月の頃』から採られている。

『願うことには、春の満開の桜の下で死にたいものだ。それも(釈迦が入滅したとされている)旧暦(陰暦)の2月15日(今の3月中旬)の満月の頃に』という意味。

西行法師は2月16日に亡くなったそうだが、「思いが叶えられる」つまり、「強く願えば、思いは叶う」ということと「幾つになっても、女も(私は男なので?)男も性欲はある」ことを、作者の紗倉まなは伝えたかったのではないかと勝手に解釈している。

<目次>

〇春、しなん

2世帯住宅を建てた息子夫婦と同居し、しばらくすると妻に異変が起こった。片づけができなくなって萎れるように元気がなくなり、そのまま逝ってしまった。妻に先立たれ

70歳の老人は、目の病気なのか、眼に春霞がかかっているような症状に悩まされつつ、自慰行為をする孤独な日々を過ごしていた。

大学時代に一度だけ関係を持った文江に出逢い、それまで内に抑えていたものが吹き出してしまった。

その時、今まで妻や嫁がどう思っていたのかが表現されていて、気を遣っているつもりでも、至らない・外れている、自分自身の身勝手さに思い当たる。

〇ははばなれ

結婚して2年経った娘が、突然、夫と母親を伴って8歳の時に亡くなった父親の墓参りに行く。その帰りにスーパー銭湯に行きたいと母が言い出し、その日は帰れなくなり、母親が一人で住む実家に泊まった。家の近くには、犬を抱いて佇む怪しげな男がいた。

父親が亡くなったときに、大酒を飲み子ども2人を残して3日間行方不明になった母親だったが、その人は恋人だと言う。そんな母親に娘は戸惑った。

 

年を取って生きること について考えさせる。