これは、好みの女とみれば直ぐにメロメロになり、また、何も先のことを考えることもなく、ただ漫然とその日暮らしを続けるダメで馬鹿な男の物語だった。このダメ男が女性がらみで殺人事件に巻き込まれる。そのダメ男を助けるために、皆が振り向くほどの美人の姉が活躍する。
主人公?のダメ男は大学中退の広中大夏、美人の姉は美桜。
大夏が最初、就職した会社はIT系の企業だった。月200時間近くのボラティア残業のあるブラック企業だったため、2ヶ月もたずに辞め、再就職したところも長続きせず、実家の喫茶店を手伝いながらぶらぶらしていた。母親・琴子が認知症と診断され、その世話をするのが嫌で姉に責任を押し付け岐阜の実家を飛び出した。
当てのない大夏は、名古屋市栄にある女子大小路のとあるバーの張り紙を見て応募し、バーテンダーとして雇われた。
バーにカップルで訪れた女性に一目惚れし、何故かその女性と一夜を共にした。その後、相思相愛と勝手に思い込んだ大夏は、メールを送り続けた。無しの礫だった女性から喫茶店で会いたいと返信が届き、喜び勇んで出かけたところに知らない女性が現れ、「ストーカー行為は止めろ」と頭からコップの水をぶちまけられた。運悪く、その場に居合わせていた警官に捕まってしまう。散々取り調べられたが、水をひっかけた当事者の女性も消えてしまったため、バーのオーナーが引受人になり、説諭で帰される。
今度は、その女性から謝罪を受けてバー留守にし一緒に出掛けた。女性は加納秋穂といい、児童相談所に勤めていた。秋穂を公園で待っているとき偶然に佐野あすかちゃん(11才)の遺体を発見し、第二の女児の殺人事件に巻き込まれる。女児の誘拐と連続殺人事件の容疑者として取り調べを受け、絶縁状態だった美桜に助けを求めた。
釈放された大夏は、秋穂に良いところを見せるために探偵ごっこを始めた。フィリピンバーに勤めるメリッサとレイチェルからも情報を得るが、2件の殺人事件は思わぬ方向に展開する。
結局のところは、大夏ではなく、姉の美桜の知恵と行動力で事件は解決する。
探偵は大夏ではなく、姉の美桜のことだった。
大夏に注目するとこの物語はコメディであり、美桜に注目するとミステリー小説といえる。