Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

パルウイルス/著:高嶋哲夫

コロナの収束の兆しが見えてきたところに、エボラウイルスよりも毒性と致死率の高い未知のウイルスが発生した。

コロナ禍においてアメリカ疾病予防管理センターCDC)で顧問として働き、ニューヨークのコロナ対策に尽力した遺伝子工学の研究者カール・バレンタインは、バイオ医薬品企業ナショナルバイオ社の副社長のニック・ハドソンから極秘の依頼を受け、P3ラボを訪れた。

カールは自身がコロナに感染し、治療中に母親も罹患し亡くなっていた。そのショックで、投げ出すようにCDCを黙って辞めたため、CDCとは距離を置いていた。

P3ラボは、感染力のあるウイルスやバクテリアを扱う。カールは、ニックに指示された資料を分析し、未知のウイルスを発見した。そのウイルスは死んではいたが、エボラウイルスに似ているが、より大きな棒状のウイルスだった。極東シベリアで秘かに発掘したマンモスの体の中に潜んでいたのだ。3万年以上凍土の中で眠っていたマンモスが、次々と温暖化で地表に露出してきていた。

カールは、CDCやWHOに報告し発表するべきとニックに提案したが、拒絶された。

そのニックも、エボラと同様の症状で発症し、感染者は増えていった。

ウイルスの封じ込めのため、CDCのメディカルオフィサーのジェニファー・ナッシュビル博士とともにサンドラ・クーパー市長の下を訪れ、アイダホ州のサンバレーのロックダウンを依頼し実施した。しかし、ロックダウンの効果がなかなか出なかった。

ウイルスは1種類ではなく、弱毒性のウイルス1と強毒性のウイルス2があることが分かった。ウイルス1は感染力は強いが致死率は低く、ウイルス2は感染力は弱いが致死率は高かった。

ウイルスの種類別に隔離者を分けていくことで、サンバレーの感染は収束に向かいだした。

カールの友人から新たに送られたサンプルを分析すると、ウイルス1でも、ウイルス2でもない、より毒性の強いパルウイルスが出てきた。

カールとジェニファーはサンバレーから、感染源の特定のためにシベリアに密入国して調査を始めた。

ウイルスを細菌兵器として活用したい、ロシア政府も動き出した。

住民丸ごと消えてしまったロシアの先住民の村があることも分かり、モスクワ大学の院生と教授の協力を得て、シベリアでのウイルス1と2の感染源の特定を行い、感染の広がりも抑えることができた。

二人は、パルウイルスの感染源の特定のためにアラスカにと向かった。

 

人類は、様々なものを破壊し、滅ぼしながら、生存し続けなければならない。その代償として失うものも大きく、未知のウイルスとの戦いもしていかなければならない。

シベリアは天然資源の宝庫と言われていて、温暖化によって凍土が溶け出すことは資源の発掘がし易くなる。一方、トナカイから炭疽菌が広がったように、シベリアやアラスカの永久凍土が溶け出し、未知のウイルスや病原菌が活性化し、世界に拡散する懸念もある。未知のウイルスが世界に拡散したとき、何千万人という感染者や死者が出る心配もあり、大変なことになることが良く分かった。