「RED HERRING」:直訳すると「赤いニシン」、ミステリー小説の分野では「意図的な虚偽への誘導、読者の注意力を間違った方向や人に向ける行為」のこと
この小説全体を通して暗示しているテーマだ。
オートロックのエントランスのあるマンションに引っ越したばかりの主人公の杉浦李奈が片付けも終わらないところにネット上で、個人情報を公開され、セクシュアル・ハラスメントなどの嫌がらせの書き込みを見つけた。
嫌がらせの主は反社も、使い李奈に明治13年(1880年)にプロテスタント教会に販売された丸善版『新約聖書』を探さなければ、嫌がらせを続けると脅迫してきた。
新人作家にとってネットなどでマイナスイメージが拡散されると、売れない小説がますます売れなくなる。そのため、警察や弁護士にも相談できず、友人の那覇優佳と一緒に聖書探しを始めることになった。
なぜ『丸善版』に拘るのか、脅迫者の狙いは一体何なのか・・・・、途中でパワハラが原因の殺人事件にも遭遇する。
出版社や万能鑑定士凛田莉子の協力も得ながら、徳川慶喜や勝海舟、徳川埋蔵金につながる謎を解明していく。
1549年、フランシスコ・ザビエルの来日で日本にもたらされた新約聖書の日本語訳が京都で出版されたのを始まりに、明治になっていくつもの聖書が出版された。また、日本の資源問題にも触れる内容で面白い。