Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

EV/著:高嶋哲夫

「EV」は、Electric Vehicleの略称で、電気自動車のこと。

この小説では、ガソリンの自動車をEVに切り替えると、どんなことが起こるかを教えてくれた。

今の自動車社会では、自動車を動かすためにガソリンが必要になる。ガソリンを給油できるガソリンスタンドも必要になる。ガソリンを運ぶための輸送機関も必要になる。

また、自動車を動かすためのエンジンが必要だ。エンジンには1万点以上の部品が使われている。これらの部品を作る会社も同じくらい存在する。

タイヤやライト、車体の部品も含めると3万点以上の部品が使われている。

1次、2次、3次、4次・・・と自動車産業に関連に従事する人たちが、日本自動車工業会の調べでは550万人、家族も含むとこの3~5倍の人数になる。

EUが、2035年(この小説では2030年)からエンジン車の新車販売を禁止とEVへの全面切り替えを決定しかけた。(ドイツの反対で、条件を満たしたエンジン車はOKとなったが・・・・・)

今後、5年や10年でガソリン車を止めて、電気自動車(EV)だけ製造することになったら、潰れる会社が続出し、何百万人も失業する人たちが巷に溢れ出ることが予想される。こんなことは、今まで考えたことも無かったので非常に驚いた。

EV用の電気スタンドも都会の一部にしか設置されていない。一度の充電で、負荷のない走行実験で300km程度しか走れない蓄電池しかない(中国は、発火の危険性もある1000km走ると言われている)。また、モーターの中心部に使われる電子機器にはレアメタルは、日本ではほとんどが輸入に頼っている。

充電するためには多くの発電設備(発電所)が必要になり、それを稼働させることで多くのCO2が新たに発生する。

地球温暖化対策としては、いずれはガソリン車からEVに切り替えていかないといけないのだろうけれど、政府と民間が一体となって取り組んでいかないと、日本は世界から取り残されていくことになる。しかし、何を決めるのも遅く、決めてもお題目だけで予算も道筋も決められない国、責任を取りたくない政治家の集まりだから心配になる。

 

日本の巨大自動車メーカーを「ヤマト」、アメリカのEVのメーカーを「ステラ」。

EVで世界のトップを目指す中国。後れを取るまいと懸命に奮闘する経産省。日本の中小企業の知恵が絡み合う、約400頁の経済小説だが、面白くて一日で読み切れた。