Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

ファントムの病棟 天久鷹央の推理カルテ[完全版]/著:知念実希人

これは、3年前に読んだ「天久鷹央の推理カルテⅡ」の加筆修正版だった。プロローグを読んで、以前読んだことがあることに気づいた。よく確かめもせずに手にしてしまって少し後悔したが、思い出しながら読めてよかった。

主人公の天久鷹央は、先天的に『他人の立場に立って考える』という能力が欠落しているためチーム医療には向かない。しかし、天才的な知識をもち「診断医」として天医会総合病院統括診断部部長をしていた。

この本は、3つの短編から構成されている。

<目次>

〇プロローグ

少年の最期を看取る医師たちが、鷹央を待っている。

〇karte.01 甘い毒

1日に3.5Lのコーラを飲み続けるトラック運転手が、運転中に体が痺れ意識が朦朧となり電柱にぶつかる自損事故を起こした。天医会総合病院に救急搬送された運転手は、コーラに毒が混入されていたからだと主張した。脳のCTや毒物検査をしても異常は見つからなかった。主治医は異常がないと退院させたが帰宅途中で意識を消失し、再度、病院に救急搬送されてきた。鷹央が謎の症状を解明する。

〇karte.02 吸血鬼症候群

療養型の倉田病院で、夜な夜な病院に吸血鬼が現れると看護師が鷹央に泣きついてきた。看護師は天医会総合病院に昨年の夏まで勤めていた久保美由紀だった。患者に輸血するために用意していたA型の血液パックが盗まれた。病院の廊下から病室へ血が点々と続き、歯で引きちぎられた空っぽの血液パックが転がっていた。倉田病院の院長の誤診が引き起こした事件だった。

〇karte.03 天使が舞い降りる夜

小児病棟の病室で天使を見たと看護師と8歳の少年が言う。それは鷹央が研修医の時に診た子どもだった。急性リンパ性白血病の抗ガン剤治療で髪の毛が殆ど無くなっていた。少し状態が良くなったので、できるだけ自宅で過ごさせたいと一旦退院になった。しかし、微熱が続き再入院となった。母親は少年の介護をするために個室に入院させていた。

天使は、髪の毛の無いことを揶揄った少年の病室の隣の中学生の少年たちが作り出したものだった。

鷹央は医者の自分に救えない命に対し、無力感に苛まれていた。

〇エピローグ

〇書き下ろし掌編 ソフトボールと真鶴

 

天才女医が「診断」で解決していく医療ミステリー。完結ではなくミステリーの続編が欲しい。