Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

いまこそガーシュウイン/著:中山七里

岬洋介シリーズ8作目。

「ガーシュウイン」ってなんだろうというところから入った。

20世紀前半に活躍したアメリカの作曲家ジョージ・ガーシュインのことだった。

最初に紹介される「前奏曲第2番嬰ハ短調」をyoutubeで聴いてみた。本文にもあったが、私にはクラシックというよりジャズのように思えた。

エドワード・オルソンは、アメリカで指折りのピアニストになっていた。エドワードはコンサートでガーシュウインの曲を演奏しようと練習していた。しかし、大統領選挙にヘイトスピーチで人心を煽るレイシスト共和党員が立候補し、その影響で人種差別が激化し、「Black Lives Matter!(黒人の命は大切だ)」のシュプレヒコールのデモも終日で起り、集中して練習ができなかった。

エドワードは、このままではアメリカは2つに分裂してしまうという危惧を抱き、音楽で何かできないかと模索した。そこで3カ月後に決まったカーネギーホールでのコンサートで、ガーシュウインの「ラプソディ・イン・ブルー」を弾くことを思い立った。

ラプソディ・イン・ブルーは、黒人音楽をルーツに持つクラシックなのでレイシストたちの心を溶かし、聴衆に融和を訴えることができると考えた。 

しかし、ガーシュウインでは、ショパンやベートーベンを期待している客を呼べないとマネージャーのセリーナ・ジョーンズは反対した。そこで、エドワードはノクターン1曲でアフガニスタンの戦闘を一時ストップさせ、24人の命を救った「奇跡の5分間」の岬洋介との共演を思いついた。岬洋介とはショパンコンクールで出会っていた。

セリーナは、岬のマネージャー・マーティンとコンタクトをとり、洋介と契約することができた。岬はエドワードの家に泊まり込むことになり、2人で「ラプソディ・イン・ブルー」の練習に励んだ。

演奏はニューヨーク・フィルだが、一部パートをオーディションで複数の人種、複数の民族から選ぶことにした。クラリネット1人とトランペット2人を加えた

一方、新大統領に恐れていたレイシスト共和党員が選ばれてしまった。新大統領は、自社ビルの68階のペントハウスに住む不動産王。アメリカへの不法移民を止めるため、メキシコとの国境に壁を作る法案を通した。このままでは、ますます人種差別が激化すると懸念する一団が、<愛国者>と呼ばれる暗殺者を手配し、新大統領の殺害を謀った。

岬とエドワードがカーネギーホールでのコンサートの杮落しに、大統領夫妻が来ることになった。

愛国者>は会場で暗殺を実行するために、ニューヨーク・フィルの新パートとして潜入した。

 

ミューズに「愛されるもの」と「愛するもの」の違い。<愛国者>も音楽を愛する者だった。

本文の最期まで<愛国者>が誰なのかは分からない構成で、引き込まれた。

貧しさと人種差別、富める者と貧者、日本も格差が広がってきている。世界が平和に融和するようにと願う作者の思いに共感した。

 

 

 

 

一方、新大統領の暗殺計画を進めていた〈愛国者〉は、依頼主の男から思わ提案をされー一。
音楽の殿堂、カーネギーホールで流れるのは、憎しみ合う血か、感動の涙か。