題名では、刑務所の中か、病院の中での出来事を扱った小説なのか、分からずに手に取ってみた。
脳動脈瘤が破裂して総合病院に搬送され、難しい脳外科の手術を行うという話から始まった。患者は病院の隣にある刑務所から運ばれてきた殺人を犯した死刑囚だ。
この物語は、脳外科手術の話なのか、それとも病院での出来事の話なのか、脳外科医とナースの話なのか、殺人の話なのか、死刑囚のことについてなのか、・・・・・作者は何を伝えたいんだと迷いながら読んだ。そのためか、僅か240頁足らずなのに読みが捗らなかった。
手術をした脳外科医・尾木と補助した看護師長・菜々穂は兄妹で、6年前に両親を殺されていた。しかも、手術をした患者がその犯人の定永だった。手術の途中で患者が両親の命を奪った犯人だと知った尾木は、定永の生殺与奪の権利を握ることになる。しかし、結局迷いながらも医者としての倫理観で助けることになった。
術後、右手脚の麻痺と発語困難という障害が残り、ベテラン理学療法士・村主の指導でリハビリを受ける。尾木と菜々穂は、村主のリハビリを支援しながら定永が本当に犯人なのか人間性について疑問に感じ、また6年前の事件に向き直る。
事件の真実と真相はどこにあったのか。
入院中、立ち会っていた刑務官の早瀬が何者かに襲われ意識不明の重体になる。誰が襲ったのか? 定永に関係があるのか?
生命の軽重、死刑の意義について問われている気がした。