Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

ecriture新人作家・杉浦李奈の推論Ⅷ 太宰治にグッド・バイ/松岡圭祐

私は太宰治には興味がない、頭は良かったのだろうが、裕福な実家の仕送りを当てにし、女に入り上げ、次から次へと女を替える。この人の作品は純文学と言われているが、暗いというイメージが強く、また、好きな文章表現ではない。

理想の生き方と思う人もいるだろうけれど、私はそんな自堕落な人間は好きではない。

この小説は、その太宰治の遺書とみられる文書と行方不明の気鋭作家の柊日和麗をテーマにストーリーが展開される。

75年ぶりに発見された太宰治の遺書とみられる文書の筆跡鑑定をしていた鑑定人が仕事部屋でボヤを出し、不審な死であったため、渋谷署刑事課の刑事扇田陽輔から、李奈に捜査協力の依頼が来た。

鑑定人の南雲亮介は、遺書の内容を「これまで太宰治が付き合いのあった女性の元を順繰りに訪ね、次々と別れ話を持ちかけ、その際、ともに心中を遂げることになる山崎富栄を同行させ、今後はこの人と付き合うことになるから別れてほしいと、どの女性にも話した」と知人や親しくしている総理大臣に告げ、真贋結果は鑑定報告書を通してマスコミに一斉に発表すると告げてた。

ただ、総理に告げた内容は、太宰治の遺作『グッド・バイ』に酷似していた。反対に心中ではなく本当は太宰は死ぬ気も無く、富栄に引きずられてしまった死ではないかと考える人もいる。太宰の死の真相は分からない為、南雲氏の報告書を待っていた。

南雲氏の仕事部屋は室内から施錠すると外から開けることができず密室になっていた。その為、自殺説もあり、李奈は真相究明のために調査することになった。

同時期に出版社・鷹揚社の杉浦由紀から、担当していた作家の柊日和麗が行方不明になっているので一緒に探してほしいとの依頼を受けた。柊は、李奈と同時期に本屋大賞にノミネートされ、李奈がほのかに恋心を寄せていた作家だったので心中穏やかにはいられなかった。

柊の両親も、出版社も行方不明届を警察に出す意思が無かったため、李奈は一人、柊の行動の足跡を辿り、城ケ島へ行った。

その頃、扇田刑事から、焼失した太宰の遺書と見られた文書は、最近の用紙を使用し、また、白紙だったとの報告があった。

柊は、城ケ島の海で水死体となって発見された。自殺なのか他殺なのか、南雲の死と繋がるのか。

最後に、両者の死には由紀がかかわっていることが判明した。

 

私のように太宰に興味のない読者には、太宰に関する記述が長すぎるので飽きかけた。