シリーズの6冊目。
定年退職後の再雇用警察官安治川信繁と少年係から左遷された新月良美と、警務部から部下の公金横領の責任を取らされ降格となり消息対応室に室長として異動になった芝隆之の3人が、四天王寺署の倉庫の2階を間借りして、誘拐、拉致、監禁といった犯罪性のある特異行方不明者の捜索に当たっていた。
<目次>
第一話 黄金の闇
0から手探りの情報集めをするよりも、手早くネットを利用するのが当たり前な世の中になってきている。出会いや結婚もネットを介してのものが主流になろうとしている。
リアルなやり取りを避け、ネットに登録された婚活サイトの情報を信じて理想の結婚相手を探すものもいる。
従兄弟・小谷章雄の消息が不明なので探してほしいと良美の高校の同級生・糸川麻子から相談を受け、行方不明者届を提出してもらった。
麻子は、婚活パーティで章雄の友人・盛本裕三郎と出会った。しかし、人違いとかわされてしまった。章雄は、父親から一億円近い金額の金の延べ棒を相続していた。
芝が特異行方不明者として取り上げ、安治川と良美が章雄や盛本の身辺の聞き込みを行った。婚活パーティで盛本は、大学院生の由良橋むつみと出会い、親しくなる。
しかし、むつみも行方不明になっていた。
婚活パーティに現れたむつみは、別人の三咲ゆきの成りすましだった。
三咲にも盛本にも裏の顔があった。
第二話 紫の秘密
源氏物語の謎が根底のストーリー。京阪大学文学部国文学科で助教が2人いた。助教は1年契約で更新のため2人は競っていた。そのうちの一人、南山が行方不明になっていて母親から行方不明者届が提出された。南山は、源氏物語の一帖の桐壺と二帖の帚木の間に消えてしまった帖があると講演会で発表した。
この幻の二帖を巡って、もう一人の助教の沢が南山を殺害していた。
源氏物語が素晴らしいという人たちが多いが、私には不倫小説のように思える。
第三話 反転の白
平成二十二年四月二十七日の時点においてすでに時効が成立した殺人事件については、公訴はなされず、それ以降の殺人事件には時効が撤廃された。
殺人の時効が廃止されたことが根幹にあるストーリーだった。
すでに時効が成立したものは再捜査されない。このことは被害者遺族にとって、不公平極まりないものだった。
植原千晶から父親・浩雄の行方が分からないと行方不明者届が提出された。
浩雄の身辺を安治川と良美が洗っていく内に、浩雄が過去に殺人事件を起こしていたことが分かってきた。
時効を迎えた殺人犯へ、忘れ消し去ることができない被害者遺族の思いが、更なる事件を生み出していた。
出世と昇進か、それとも正義か、警察官としての矜持をどこまで持ち続けるのか。現実は難しいと思うが、こんな警察官たちがいても良いんじゃないかなぁ。