「能面検事」シリーズの2作目。3作目が出たので、読み直してみた。
主人公は、大阪地検一級検事の不破俊太郎。不破は、感情が表に出てこず、周囲の人間からは感情が一切読めないため、陰で「能面」と呼ばれている。
学校法人萩山学園に対する大阪府岸和田市にある国有地払い下げに関し、近畿財務局職員の収賄疑惑が持ちあがり、大阪地検特捜部が捜査を始めた。
ところが、担当主任検事・高峰仁誠による決裁文書差し替え疑惑が起こった。保管文書の一部に紙質に違いが有るという内部告発から、差し替え(改竄)が疑われたのだ。
そこで、最高検から調査チームが派遣された。チームの中に、東京地検のエースの岬恭平次席検事もいた。岬は、東京地検在任中の不破の上司だった。
特捜のホープと言われた高峰検事は、最高検チームの取り調べでは埒が明かなかった。
そこに、不破検事も加わることになり、惣領美晴事務官と調査に乗り出した。
忖度もせず、一切ブレない不破検事は、紙面での調査しか行わない最高検の検事とは異なり、美晴事務官と現場に足を運び、聞き込み調査も行った。
払い下げの窓口だった近畿財務局の安田啓輔調整官と高峰検事は、大学時代に通っていた食堂「一膳」の店員・小春を通して親しい関係になっていた。
小春は20年前に行方不明になっていて、家族から捜索願が提出されていた。
「一膳」の近くに国有地払い下げで問題になった寺井町の鏑木医院跡地で、不破と美晴は、男女の白骨遺体を発見した。
女性の白骨遺体は、小春だった。遺体から、安田と高峰の20年前の事件への関わりが判明した。
安井が寺井町の国有地払い下げを回避させるために、萩山学園理事長に口走った一言が差し替えに繋がった。文書差し替え(改竄)は、収賄ではなかったことが分かった。
男性の遺体は、小春を襲い殺した男のものだった。
20年前のことで、時効が成立する事件なのか。不破検事はブレることなく立件した。
「モリカケ」を連想させる国有地払い下げ事件と殺人事件という2つのテーマが内蔵されていて最後まで面白く、また、汗もかかず上昇志向しかない連中をモノともしない、不破検事に大いに共感した。