人は誰もが、帰る場所を探しているのかもしれない。それは生まれ故郷かもしれないし、愛しい者がいる場所かもしれない。人それぞれに違うけれど、誰もが自分が返る場所を求めて生きている。
哀しみ。やるせなさ。怒り。この小説の途中から、ずっと私の心の中に占める思いだ。
自分の娘・愛理と近所に住む栞、2人の幼児を殺めてしまった女性死刑囚三原響子の悲しく切ない小説だった。
プロローグは、不思議な詩のような文から始まる。
本人が知らないまま身元引受人にされていた埼玉に住む吉沢静江のもとに東京拘置所から突然三原響子の遺骨と遺品の引き取り依頼の連絡を受ける。静江にとって、響子は従姪(じゅうてつ/いとこめい)にあたる。(従姪とは、いとこの女の子どものこと。)
遺骨を受け取りに行ったのが静江の娘・香純。響子とは小学生の時に法事で一度出会っただけの関係だった。
三原家に遺骨の引き取りの連絡をするが拒否され、途方に暮れて教誨師だった下間に相談し、三原家の菩提寺にも依頼するが断られる。
『約束は守ったよ、褒めて』、残された言葉の意味を追い続けて、響子の出身地の青森を遺骨を抱いて香純が訪れることになった。
冤罪の話ではないかと思いながら読み進めていったが、読み続けていくうちに、世間や親族、父親、夫など誰一人として味方になってくれず、暴言や仕打ちに追い詰められた末の悲しい犯行ということが分かった。