「おっぱいマンション」というちょっとエッチな題名が目に留まり読んでみた。
最上階に2つの大きな円錐形の突き出した大きな窓のあるマンションが、あたかもおっぱいのように見えるということでこの名がついていた。
昭和40年代に建てられた10階建てのマンションをどうするかの話だった。
建築当時は、有名建築家が設計し話題になり、また、庶民が購入するには高くて手が出ないマンションだった。しかし、築40年以上が過ぎ老朽化し、また建築基準法を満たさなくなり、狭いエントランスやゆっくりとしか動かないエレベーター、雨漏りがし簡単には直せない窓枠、2000年代になって発癌性があると禁止されたアスベストを使っていることもあり、リフォームか建て替えかで問題になってきていた。
「メタボリズム(新陳代謝)」とは、黒川紀章や菊竹清訓ら日本の若手建築家・都市計画家グループが開始した日本独自の建築運動で、社会の変化や人口の成長に合わせて有機的に成長する都市や建築を提案したもの。
立て替えるかどうかで住民会議になり、結局、建て替えに決まった。しかし、反対する住民からの訴訟や、民泊を始めた新住民からの建て替え反対運動があり、宙に浮いてしまった。
昔は良しとされたものでも、時代の変遷でマイナス評価に転じてしまうものもある。この頃に建てられたコンクリート造りの建物の改築や取り壊しで、現在は大いに頭を悩まされている。
タワーマンションなどの高層マンションも、20~30年後には老朽化が進み、また住民も年齢が上がり、改修や建て替えで話がまとまりにくくなり、問題が発生すると思われる。
日本の都市部の近い将来を暗示したような小説だった。