2013年に発売された『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES いつわりの樹』が10年ぶりに文庫化された小説だ。神永学の作品は全作読んでいたつもりが抜けていたのが分かり読んでみた。
赤い左眼で死者の魂を見ることができる青年・斉藤八雲が、同じ大学に通う小沢晴香と出会い、警官の後藤と石井とともに次々と起きる怪事件に挑んでいくサスペンスミステリー小説だ。
神社の境内にある樹齢千年を超える「いつわりの樹」と呼ばれる杉の木の前で刺殺体が発見される。事件はここから始まる。
昔、この木の前で商人の娘と妻がいるのにもかかわらず偽りの契りを交わした武士が原因不明の病で亡くなった。それ以来、この木の前で嘘を吐くと呪われるという噂がたっていた。
被害者が石井の高校時代の同級生だったことにより、石井の高校瀬時代の悲惨な思い出と10年前に神社の階段から転落死した女子高生のことを思い出し、石井は恐怖に怯えることになった。
晴香が友人の様子がおかしいと八雲を訪れるが、その友人は霊に憑依されていた。原因を確かめるため、神社を訪れていた八雲が後藤と石井に遭遇することで2つの事件が結びついていく。
石井が虐められていたこと、石井を好きな真琴も虐めにあっていたこと、八雲自身が赤眼で虐められていたことがストーリーの伏線にあって、被害者と女子高生の2人の霊が絡んで起こった殺人事件をどう解決するのか予測がしづらく面白かった。
考えても仕方が無いことだが犯人はどう裁かれるのだろうか?
タイトルに「ILLUSTRATED EDITION」とあったようにフルカラーの挿絵が巻末にあったが、ストーリーの節目節目ごとにあっても良かったのではと思った。