Trex70’s blog

特別支援教育士として、障害児の教育相談を2000組近く行い、引退後は、毎年200冊以上の本を分野に関係なく暇に任せて読んでいます。Trexはティラノサウルス・レックスのこと。大好きな恐竜です。

海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~/田島木綿子

日本一クジラを解剖してきた研究者が、七転八倒の毎日とともに海の哺乳類の生態を紹介する科学エッセイ。

「クジラが打ち上がったよ」の電話一本で日本中どこにでも駆けつける田島さん。

クジラの死体を放置しておくと内臓に溜まっていく空気で爆発してしまう。そうなる前に処理をしないといけないので時間との勝負になるそうだ。骨格標本にするために土に埋めて、自然の力で白骨化させたりする。

解剖すると驚くほど微細なプラスチックごみが大量に体内から出てくる。人間による海洋汚染が原因で多くの動物が死んでいっている。

人間も自然界の一員だから、これからどうすればいいのか考えないといけないと思った。

<目次>

1章:海獣学者の汗まみれな毎日

2章:砂浜に打ち上がる無数のクジラたち

3章:ストランディングの謎を追う

4章:かつてイルカには手も足もあった

5章:アザラシの睾丸は体内にしまわれている

6章:ジュゴンマナティは生粋のベジタリアン

7章:死体から聞こえるメッセージ

 

 

 

invertⅡ 覗き窓の死角/著:相沢 沙呼

城塚翡翠千和崎真が主人公のミステリ小説だ。テレビでも放送された内容だが、テレビとは異なり台詞と台詞の間に書かれた心理描写が面白い。

「生者の言伝」と「覗き窓の死角」の2篇からなる。

「生者の言伝」は、友人・悠斗の家族が所有する別荘に不法侵入した夏木蒼汰が、殺人事件に巻き込まれる話。蒼汰自身が殺人犯だと思い込み、慌てふためきいろいろと工作をする。しかし、最後まで読むとどんでん返しが待っている。

「覗き窓の死角」は、写真家の江刺詢子が妹を自殺に追いやった者達に復讐をしていく話。

友人になったと思っていた詢子に翡翠自身をアリバイ証人として仕立てられる。仕組まれたトリックを暴き、アリバイを崩していく過程が面白い。

 

 

もののけ本所深川事件帖 オサキと骸骨幽霊/著:高橋由太

もののけ本所深川事件帖シリーズ第六弾。妖怪時代劇で古道具屋鵙屋(もずや)の手代の周吉が主人公。周吉は幽霊や妖が見え、キツネの妖狐・オサキが憑いている。田沼意次の時代である。本所深川では、金のためなら殺しもいとわない畜生働きの盗賊が暴れ回っていた。そんな中、周吉が店のひとり娘のお琴に向けて書いた恋文が飛ばされ、町外れの墓場に落ちたところに地べたから現れた骸骨幽霊・朱里に拾われ、自分宛ての文だと勘違いした。墓場から次々と現れる成仏できずにいる骸骨長老や骸骨の剣士に脅されて、周吉はお琴と夫婦になることになった。骸骨の中には畜生働きの所為で一家皆殺しあったものもいる。 店に戻るため骸骨幽霊を成仏させようとしていた周吉だが、鵙屋に残忍な強盗が押し入るとの情報が入り思案する……。

直ぐに読み終えられる楽しい本だった。

 

盤上の向日葵/著:柚月裕子

各章の何気ないエピソードでこちらを引きこむ。虐待親から飴玉をもらった時に少年が見せる明るい表情。大阪の不動産屋の女性事務員の、なんともリアルなお喋り。かつて駒を所有していた人々が吐露する奥深い人生模様。もちろん、将棋の世界が丁寧に描かれるのも大きな魅力。プロ棋士だけでなく、金を賭ける真剣師たちの勝負も迫力満点だ。それにしてもこの著者、推理作家協会賞受賞作の『孤狼の血』もそうだったが、頭は切れるものの態度が下品、という年配男を書くのがどうしてこんなに上手いのか。部下に対してワガママ三昧の叩き上げ刑事の石破、桂介と親しくなる裏社会の真剣師・東明重慶(しげよし)、そして息子の人生を搾取しようとする桂介の父親。彼らの生臭さが実感として伝わってくるからこそ、終盤にようやく明かされる真実には打ちのめされてしまう。

 

 

神様からひと言/著:萩原浩

「会社や仕事なんかのために、死ぬな」!!

著者からのメッセージだが、私も大学を出て金融機関に就職し約6年に亘って毎日毎日ノルマに追われ、俺は何のために生きてるんだろう、毎月150時間近くサービス残業をし身体まで壊し、なんでこんなに働いてるんだろうと大変な経験をしたことがある。

この本は、転職した食品メーカーでトラブルを起こしてリストラ要員収容所と目される「お客様相談室」へ配属された佐倉凉平の話だ。「お客様の声は、神様のひと言」というモットーのもとクレーム処理に振り回される中で仕事や人生に向き合いながら成長していく。まともな意見を無視する会社に疑問を抱いて上司の篠崎とともに会社と対決する姿を描いている。

 

 

前恐竜時代 失われた魅惑のペルム紀世界/著:土屋健

この本は、ペルム紀に生きた生物たちについて書かれたものである。

ペルム紀とは地質時代での分類上で原生代の後に続く古生代(5億3900万年前~2億5200万年前)の中の一つの時代。古生代は、カンブリア紀(5億3900万年前~4億8500万年前)、オルドビス紀(4億8500万年前~4億4400万年前)、シルル紀(4億4400万年前~4億1900万年前)、デボン紀(4億1900万年前~3億5900万年前)、石炭紀(3億5900万年前~2億9900万年前、ペルム紀(2億9900万年前~2億5200万年前)に分かれる。植物は花の咲かない裸子植物とシダ類が繁茂していたらしい。無脊椎動物のほかに、脊椎動物が誕生した。顎も鱗も持たない小さな魚(脊椎動物)が誕生し、やがて鱗を持ち、次に顎を持ち、水際近くの陸に上陸し、内陸部に進出した時代だ。

両生類から派生して爬虫類や単弓類が生まれている。頭蓋骨の穴の数の違い(鼻と眼の穴は除く)で、無弓類(穴が無い)、単弓類(穴が一つ)、双弓類(穴が二つ)とに分けられ、人類を含む哺乳類は単弓類になる。恐竜やカメなどの爬虫類は双弓類になる。

ペルム紀前半に出現したディメトロドンや後半に出現したイノストランケヴィアは単弓類。ペルム紀は単弓類の全盛の時代だった。また、三葉虫などの無脊椎動物たちも古生代に全盛を極め、ペルム期の終わりの大量絶滅でに終焉を迎えた。

 

 

無戸籍の日本人/著:井戸まさえ

配偶者によるDV。婚姻中に別の男性の子を妊娠し、離婚後も追いかけてきて暴力を振るう男から逃れるために住民票も移さずにそのままにする人がいる。

現行の民法772条2項では、「婚姻成立から200日経過したあと」または「離婚後300日以内」に誕生した子供は婚姻中に妊娠したものと推定され、婚姻中の夫婦の間に生まれた子どもとして戸籍に記載される。これが原因で別れた元夫の籍に入れることを躊躇い、生まれた子どもには出生届も出せない(出さない)ことがあるのを知り驚きました。結果として、その子どもは戸籍のない子(無戸籍児)になってしまう。

無戸籍児がそのまま大人になって結婚したいと思える人に出会ったとき、戸籍が無いことで結婚を思い止まったり、結婚しても生まれた子も無戸籍になってしまったりという現実がこの日本に存在する。

井戸さんのように行政に明るい人と出会えればいいが、そうでない場合、義務教育も受けられないままになる。家も借りられない、銀行に口座も作れない。そんな無戸籍者が、推定で1万人以上いるそうだ。

何とかしなければ活動する政治家は極端に少ないらしい。お金にならないからだ。

こんな日本で良いんだろうか?何もできない自分自身も情けない。