冲方丁の本なので手に取ってみたが、私の苦手な怪奇ホラー小説だったので読むのを躊躇った。
『東棟地下、施工ミス連発』『東棟地下、いるだけで病気になる』『東棟地下、喉が痛い、絶対に有害なものが出ている』『東棟地下、火が出たあとの壁、見ると頭痛がする』『東棟地下、ここでも火が出た、息が苦しい辞めたい』『東棟地下、作業員全員入院』『東棟地下、人骨が出た穴なのに誰も言わない』
主人公は、大手デベロッパーのIR部危機管理チームで勤務する松永光弘。松永は、不正を隠蔽しているかのようなSNSの書き込みの調査のために、渋谷の建築中の自社ビルの地下へたった一人で向かった。こんなSNSの書き込みがされた建築中のビルに一人で入らせるなんて、安全面からは考えにくい。松永が考えが足りないタイプとしても、会社としての配慮が足りない。これじゃブラック企業と同じじゃないか。
懐中電灯も持たずにヘッドライトだけで深い深い地下に降りていくと、途中から白い灰が随所に積もっていた。異常な乾燥と嫌な臭い、まさに人の骨が灰になる臭いを感じながら、図面に記されていない巨大な穴のある祭祀場のようなところに辿り着いた。その穴の中には男が鎖で繋がれていた。息をするの憚られ、喉もひりつくほど乾燥し、嫌な臭いでパニックに陥りながらも、男を穴から懸命に救出した。途中、火が出たのか、煙に巻かれながらも必死に地上に戻った。振り向くと救出したはずの男は消えていた。この時から、松永と妻と娘を巻き込む、呪いと祟りによる恐怖が始まった。
白い灰は、昔たびたび江戸・東京で起こった大火や、関東大地震や第二次世界大戦で焼け死んだ人々の灰だ。東京のどこを掘り返しても、その怨念や呪いが籠った灰が出てくるという。警察のビル深くにも、怨念や呪いを鎮めるための祭祀があった。
ドツボに嵌るように、異常な状況に松永自らが進んでいく。どうしてそっちへ行くの?どうしてそこで止めないの?とイライラするともに、恐怖感がじわじわと湧いてきて夜寝られなくなるじゃないか思いながらも、最後まで読んでしまった。
冲方氏がこんな超ホラー小説を書くとは思いもしなかった。無茶苦茶怖かった。
<目次>
第1章 解放二〇一五年
第2章 たまい
第3章 父とともに
第4章 遺品
第5章 御饌使
終章 竣工 二〇一九年