タイトルのウツボカズラは、食虫植物。甘い蜜の匂いで虫たちをおびき寄せ、ツボに落ちた獲物を食料として吸収する。
これは、ウツボカズラのように甘い話に誘われ、事件に巻き込まれた女の物語だった。
子育てに関心のない、育児放棄に近い両親に育てられ為に、小学生時代は虐めにあっていた主人公・牟田文絵が、中学生になるとシンデレラのように変身し、男子生徒からちやほやされる存在になる。そんな美人と評判だった文絵は、結婚生活や子育てのストレスで太ってしまい、美貌を失ってしまう。また、居眠り運転のトラックに子どもたちの命が奪われ、解離性障害を発症する。
唯一の楽しみが懸賞に応募することだった。大物タレントのディナーショーの懸賞にあたり、会場で中学時代の同級生・杉浦加奈子と偶然再会した。
鎌倉の七里ガ浜にある加奈子の別荘に招待され、高級化粧品のビジネスを手伝ってほしいと依頼され、夫に内緒で始めることになった。
そんな中で文絵は、突然警察に投資詐欺と殺人容疑で逮捕される。文絵は、化粧品ビジネスを手伝っていただけと無実を訴えるが、肝心の加奈子は数年前に自殺して存在していないことが判明し聞き入れてもらえなかった。
全ては、謎の女・加奈子に仕組まれた罠だった。
物語の後半で、加奈子と名乗る女の詐欺と殺人が、ドミノ倒しのように突き止められていく。
もう少し、後半部分を膨らませても良かったのではないかと思えるスピーディなストーリー展開だった。