秋麗(しゅうれい)とは、「秋晴れの心地よい気候でのどかなこと」という意味だが、そういうのんびりした小説ではなかった。
人生の中で秋を迎えるを「白秋(はくしゅう)」というが、まだまだ枯れていない世間に対して一矢報いたいというお年寄り達(ここでは、白秋というより玄冬)が起こした事件だった。
白秋は、中国の五行思想にある人生を「青春 15~29歳」「朱夏(しゅか) 30~44歳」「白秋 45~64歳」「玄冬(げんとう) 65歳以降」と段階に分けた1つ。日本を代表する詩人北原白秋もここからつけられた名前だ。
東京湾臨海署(湾岸署)に勤務する安積班の安積、須田、水野が活躍する。
青海三丁目付近の海上で、七十代の男性の遺体が発見される。特殊詐欺の出し子として逮捕された戸沢守雄だった。
殺人事件として本部が臨海署に立ち上がった。殺害の動機が分からないまま、戸沢の釣り仲間を調べていくうちに特殊詐欺事件が関係していることが分かってきた。
本部に召集された以外の他署や交機隊の協力を得ながら、事件の核心に迫り、犯人を自供に追い込むところが、いつもながらの面白い小説だった。