浮雲心霊奇譚シリー8作目。主人公は霊を見ることができる浮雲。
江戸を旅立った浮雲と土方歳三は、京へ向かう道中で三つの事件に遭遇する。
〇生首の陰
関所破りをして斬首されたお玉という奉公人の首を、洗った池だと言われているお玉が池を舞台に ストーリーが展開される。
旅の途中、箱根で女の生首に襲われて逃げてくる遼太郎と名乗る若者に出逢った。生首は、箱根越えをしようとしていて山賊に殺された女の霊だった。
遼太郎には様々な怪異や幽霊に憑りつかれやすい性質があった。
雨の中、山奥の廃寺に辿り着いた一行は、その夜、商人殺しの事件に巻き込まれる。
〇絡新婦(じょろうぐも)の毒
三島宿が舞台。瞽女(ごぜ)という目の見えない女旅芸人が出てくる。
血を抜かれ、干物のように干からびた死体が木に吊されるという事件の謎を、浮雲たちが解明する。
人間を蜘蛛ケ淵の滝壺の中に引き摺り込む絡新婦という物の怪が棲んでいるという噂がある蜘蛛ケ淵で逢引きしていた両替商の植松屋の息子藤一郎と瞽女おきみのうち、藤一郎が行方不明になった。
遼太郎が霊に憑りつかれ、浮雲と歳三が解決に乗り出す。
〇黒龍の祟り
舞台は吉原宿。
寛永と延宝の時代に高潮に襲われ多くの人の命が落とした浜があった。龍が高潮を招いて災いをもたらしたという伝説がある。高潮を防ぐために人身御供にされた子どもの霊に遼太郎が憑りつかれた。
その遼太郎の身に危険が迫り、浮雲と歳三が活躍する。
物語の後半に、遼太郎は後の将軍・徳川慶喜と分かる。遼太郎と浮雲、歳三に降りかかっていた一連の出来事には、慶喜を亡き者にしようとする朝廷派と防ごうとする幕府派の駆け引きも関係していたことが分かった。
与えられた運命を受け入れることができず、背を向けて逃げ出した遼太郎。そんな彼に対し、「逃げたいときは、逃げればいい。今は逃げておけ。おれもそうだった」と声をかける浮雲。続編で遼太郎の考え方がどう変化していくのか楽しみだ。
321頁、3時間ほどで読み終わってしまった。京都に着くまで続編があと何巻か続くのだろう。楽しみだ。