これは、役人と盗人の二人の出逢い、信頼と尊敬と友情の熱き時代小説だ。
天明四年五月の十三夜の月夜に御先手弓組の幣原喬十郎が、口入屋國田屋庄右衛門と下女おたきの惨殺体の傍らで匕首を手に両眼から涙を流している男と遭遇する。男の名は千吉(後の両替商銀字屋の主利兵衛)、「大呪の代之助」一味のと判明する。
千吉は殺害を否定し姿を眩ませる。十年後に喬十郎は、銭相場のトラブルで殺害された塩問屋の事件を追う中で、両替商となった千吉に出会う。火付け盗賊改役の長谷川平蔵の助言を仰ぎながら、探索を進めていく中で、本両替商・勘定奉行・老中も絡む底の深い大きな事件と判明していく。しかし、平蔵は自身が作った人足寄場の存続のために、喬十郎を突然裏切ってしまう。そのため、喬十郎は佐渡奉行所へ左遷される。
再び江戸へ戻れた喬十郎と利兵衛は再び出会ったが、町人への御用金の徴収、貨幣の吹き替えなどで行き詰った幕政を立て直しと、それに乗じて私腹を肥やそうとする闇社会と幕政に翻弄される。
<目次>
〇十三夜の邂逅
〇長谷川平蔵の罪
〇悪の絵図
〇政と謀
〇残照