この小説は、中国の魏・蜀・呉の時代の三国志に登場する諸葛孔明にスポットライトをあてて書かれている。
下巻は面白くなかったので、読み終わるまでに時間がかかった。
次から次へと様々な人物が登場するが、それぞれの人物の人間味がほとんど描かれていない。書きたいことが一杯あったのだと思うが、膨らみが足りない。
また、いくつもの戦の事が書かれているが、どのような場所・立地条件で戦ったのか、どのような兵器をどのように使い、どのように兵隊たちを動かしたのか、具体的に戦いが終わるまでに何日かかったのか、どのように兵糧を調達したのか(後半で少し触れられているが)等、具体的な記述は一切ない。
多くの史実を書き連ねているので、紙面に余裕が無かったのかもわからない。今までの宮城谷の小説ではここまでのものは無かったように思った。
ただし、上巻で軍略家ではなく行政官と感じたが、下巻では行政能力を兼ね備えた軍略家だったと感じた。
劉備玄徳が興した蜀(漢)の国を劉備が亡くなった後を継いだ玄徳の息子・劉禅を丞相(君主を補佐した最高位の官吏・総理大臣)として補佐した。
また、劉備の遺志を継いで魏(曹操の興した国)の北伐を敢行した。出師にあたり、有名な「出師の表(軍隊を出陣させる際に劉禅に送った、憂国に溢れた文。玄徳に可愛がられた部下を置いていくから、彼らの言うことをよく聞くようにという劉禅に対する指示文)」を劉禅に上奏した。
街亭の戦いで軍令無視をし敗北した孔明の愛弟子の馬謖を処刑する(有名な故事「泣いて馬謖を斬る」)。
孔明は、これまであった連弩(連続発射できるボウガン)を改良した孔明連弩(元戎)を作らせ、戦で使用した。また、多くの物資を運べる「木牛(四つ足で中央に車のある大きな一輪車)」を考案し、戦で活用した。
孔明本人が考えたのかどうかは分からないが、発明家とも言える。
孔明は魏の領土を奪い、蜀を大きくしていったが、劉禅を葬り、皇帝の位を簒奪ということはなく、劉備の遺言を守り通した傑物と言える。
<目次>
攻防
益州平定
漢中王
報復
南征
三路軍
北伐計画
遠交近攻
出師表
街亭の戦い
新しい道
静かな攻防